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小さき麦の花のnのレビュー・感想・評価

小さき麦の花(2022年製作の映画)
4.7
山西省の農村で、貧しい中年の男性ヨウティエと、体に障害のある女性グイインが、家族親類に厄介払いされるような形で半ば強制的に結婚させられる。これに始まり、お前らのような奴らはこれぐらいの扱いが妥当だとでも言いたげな顔をした周囲の人々から、二人は次々と、淡々と酷い仕打ちを受け続ける。親戚だからとタダでいいようにこき使われ、血を抜かれ、家を追い出され…。観客から見るとあまりに理不尽だが、咎める人は本当に誰一人いないし、二人も黙ってこの扱いを受け入れ、ほとんど抵抗は示さない。それがなんともリアルで恐ろしい。演技も演出もわざとらしさがなく自然で、ドキュメンタリー風ともいえるが、ドキュメンタリーだったらこれを平気で撮らせはしないだろうと思わせるような、さりげなくも醜悪な場面の連続で、しかも今に二人がもっと酷い目に遭わされるのではないかと気が気ではなくて終始目が離せなかった。心優しい二人が互いをいたわり合い、絆を深めていくところに慰めがあるが、それにしても。「永遠の愛」がどうとかいうより、社会に、人心に根づく差別を克明に描き出す、静かながら厳しい映画だったと思う。(劇伴はちょっとうるさかったが…。)

ほかに心が和むところとしては、かわいいロバが名演技を披露している。やけにロバの登場する映画が多い2023年上半期だったが、助演ロバ優賞は間違いなくこの作品だろう(主演ロバ優賞はもちろん『EO イーオー』)。
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