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セデック・バレ 第一部 太陽旗のnのレビュー・感想・評価

5.0
植民地支配の内実(大量虐殺、土地と資源の強奪、経済的搾取、性的搾取、強制移住、文化の抹消と強要、コミュニティの分断…)を克明かつ平易に簡明に描いた映画で、植民国家イスラエルによるガザ地区ほかでのジェノサイドが続いてしまっている今改めて観るとあまりにタイムリーで苦しくなるほどだ。特に後編はエンタメに振れすぎているのではないかという批判もあるようで、それももっともなのだが、他方でエンタメ映画にすることでより多くの人が観やすくなるという意義も大きいと思う。ありがたいことにこの映画における悪役である日本人にとっても全然観やすい作りになっているので、特に大日本帝国の加害について何ら知識がない日本人はまず全員観るべきである。旧植民地出身の人に対して吉村みたいな態度を取る奴、今も普通にいるでしょう?何もかも地続きなんだということがこれを観ればわかるはず。

映画の中でセデック族を演じたのは多くが演技経験のない台湾原住民の方々だったということだが、それがにわかには信じられないほど、壮年のモーナ・ルダオを演じた林慶台さんを筆頭に全員が名優、名脇役の域に達している。彼らを見出し、長期にわたる訓練を施した製作陣の熱意にも、それに見事に応えた出演者たちにも尊敬の念を禁じ得ない。(実際の撮影はガチの山奥で行われたため、メイキング映像を観るとクランクイン後の環境は過酷というにも過酷すぎて正直ドン引きするが……)

日本軍の侵略後のセデック族の人々の生活の様子は、アメリカのインディアンの境遇とも重なって見える(マヘボ社の若者たちが「オヤジ」の店の前で酒を飲むシーンの巧みさといったら)。ハリウッドも金はあるんだから『ウインド・リバー』とか『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』みたいに白人のスターを使って手抜きしてないで真正面からこういう映画を作ってみろよとも思った。
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