Omizu

That Kind of Summer(原題)のOmizuのレビュー・感想・評価

That Kind of Summer(原題)(2022年製作の映画)
3.8
【第72回ベルリン映画祭 コンペティション部門出品】
『ヴィクとフロ、熊に会う』『ゴーストタウン・アンソロジー』のカナダの異才ドゥニ・コテ監督作品。性欲過剰の女三人がセラピストによって集められ、郊外の家で約一か月暮らすという話。

ドゥニ・コテは『ヴィクとフロ、熊に会う』『ゴーストタウン・アンソロジー』も素晴らしいと思っていて、すごく好きな作家なのに日本では全然やってくれない。まあこの性描写なら仕方ないか。

坊主頭にピアスだらけの女、精神的な問題がある大人しめの女、常にハイで絵を描く女とそれぞれ強烈な女たち。そして受け入れる側も面白い。ドイツ人でレズビアンのセラピスト、唯一の男性でアラブ人の監視役。この五人が織りなすアンサンブルが楽しい。

特に大きな事件があるわけではなく、一緒に暮らしているうちに最初は語りたがらなかった自分のことを話し出す。きっかけはなんだったのか、しているときはどんな感情なのか、自分で原因がなんだと思うか。

ある日完全オフの日があり、おのおの決まった場所へ繰り出す。そして赤裸々なプレイをみせていく。ある者は野外でのフェラ、ある者は緊縛プレイ、ある者はトラック運転手の誘惑…

セラピストはレズビアンの恋人と上手くいっていないようでマスターベーションをしてしまったり、監視役のサミは彼女たちの誘惑に翻弄されたりする。両者ともカナダ人ではない他者としての側面を負っているのが興味深い。

性に対して全く同じ認識でいる人なんていない。性を中心に描きつつも、恵まれているとは言えない人々の社会的背景も浮かび上がらせる。

ドゥニ・コテならではのざらついた質感のカメラが郊外の光を魅力的に捉えている。コテの何も否定しない姿勢が好き。

ただ、「プレイを赤裸々に映す」のはいいけど、これってポルノとどう違うのか、と思ってしまった。今の時代女性の肌ばかり映して大丈夫かなとは思った。
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