ある程度予想してたけど、思ってた以上に辛い映画だった。
バトルロワイヤルとかイキガミとかのようなマンガ風フィクション感がないリアルな脚本、ドキュメンタリータッチの映像・演出は、現実の高齢化社会問題を背景に、まんざらありえない未来とは思えない重みがあった。
実はこの"プラン75"と同じようなことを妄想したことがある。
ただ、本作の口減らしのような冷徹な処遇ではなくて、もっと”尊厳死”として意志尊重してもらうイメージで。なので作中設定の一時金10万円とかじゃ話にならんし、いわば人生の早期退職として相応の権利を保障してもらわんといかん。使い道はもちろん自由だが、自分だったら子供に遺したいかな…なんて妄想。
”自死”って動物にはできない行為だよね。人間は場合によっては利他的にその選択をし得る高度な生物なんではないかと思ったりもする。
命は大切だし、誰しも生きる権利がある。わかっちゃいるんだけどね。
本作の現役若年層の登場人物は、死を決意した老人を気遣ったり、いたわったりする。最初はあくまで仕事だからだったりするけど、人としてやり切れない気持ちになるのは自然なことだろうし、そんな社会制度が現実になっても人の倫理観や感情は普遍的ということに少しホッとはする。が、誰も老人の自死選択を制止するまでにはいたらない。
でも、だからと言って偽善だろ！とか自己満足だろ！と非難する気にはなれないな。きっと自分も同じようにする気がするし…。せめて、いずれ自分の順番がきたときは潔く…と心算はしておくべきかなとは思った。
それにしても、お客さんのほとんどがシニア層とおぼしき方々だったのは印象的だったな。皆さんどんな気持ちで観ていたんだろうか。
なかなか誰しもにオススメできる作品ではないけど、この先も日本で暮らしていくなら観ておいて損はない、できれば観ておくべき作品かとは思った。
