サッカーと映画観るのがすき

オッペンハイマーのサッカーと映画観るのがすきのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
アカデミー受賞直後のタイミングで待望の日本公開。いわずもがなクリストファー・ノーランの最新作にして、日本人ならなかなか無関心ではいられない原爆開発の物語。直近DUNEのおかげでIMAX体験の興奮冷めやらず。これだけの材料があればテンション上がらない訳がなく、不覚にも無防備(予習なし)に突撃してしまった。
で、上映開始数十分で気づく…「そうだった、ノーラン作品なんだよね」。相変わらずの初見殺し、今回はSFでもない、基本的には史実を描いた伝記モノなのに、ここまで視聴者を困惑させる必要あるか?特に前半なんか、誰が誰に何の話してるんだか、まったくついて行けなかったw(もう笑うしかない)
なのに鑑賞後のこのなんとも言えない気色悪くも、エラいもん観させられた感。案の定というか興奮冷めやらぬ勢いで、訳わからなかった設定、人物、会話をものすごい勢いで復習、だいぶ腹落ちしたところで、再度、いや再々度観たくなる。完全に術中にハマったようだ。ノーラン、やっぱり恐るべし。

魔力のある作品だと思う。
あえて”魅力”ではなく”魔力”と記しておきたい。随所で不安心理を煽る脚本・演出は物凄く禍々しく、IMAXの威力を過不足なく引き出すダイレクトに心臓に響く映像と音響効果によって、そこらのホラーよりも断然恐ろしい作品になっておる。よもやこんな感覚にさせられるとはまったく想定外。

本作のテーマとその描き方について、特に日本ではいろんな見方・意見はあろうかと思うけど、個人的には何しろこの作品を観ることができて本当によかったと思っている。(一時は、日本公開は無いんじゃないかとかいう噂もあったし)
あの時代にアメリカ、参戦各国(もちろん日本も含む)の為政者や科学者がどんな思惑で何をしたのか、しようとしたのか。その結果産まれた功罪。
科学者人材、資源、資金すべてにおいて劣っていたので幸か不幸か完成にいたらなかったが日本も原爆開発に取り組んでいたのも事実。開発責任者の仁科博士は当時開発競争に敗れたことを切腹に値すると自責の念に駆られていたという。
何が正義とか悪とかではなく客観的に史実を知ろうとすることがまずは大事だと思う。

正直、ノーランマニアで数回は観る前提でなければ、ある程度の予習は必須級の登場人物数と難解な構成ですが、とにかくもの凄い映像体験は保証します。是非ともIMAXで観てもらいたい作品。