ののな

PLAN 75のののなのネタバレレビュー・内容・結末

PLAN 75(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

すごく面白かった‼️‼️

例の○□メガネの某人の言説が思い出される内容。

冒頭から非常にきつい。これも、連想させる実際の事件があるのが悲しすぎる。
ここに横たわっているのは姥捨思想というより、優生思想に近いのではないか。plan75が浸透したらplan50とかいって知能(IQ)で区切ってやり始めるんじゃないだろうか。

国にとっての「生産性」だけに注目して社会保障費を割きたくない対象を殺す政策なんて、財政面だけでなく国としての在り方そのものが貧しくなっている証拠。ディストピアとはいっても同調圧力の強い日本ではすごく現実味がある内容なのが怖い。

国の委託事業として淡々と関わる職員の人々も、他人事でなくなることで徐々にその異常さに苦しめられていく。

本作では倍賞千恵子演じるミチさんの環境も描くことで、plan75という制度自体の恐ろしさだけでなく、自己決定の危うさも伝えているように感じた。

国民的な広告塔がその制度に好意的な発言、耳障りのいい言葉、同僚・友人の中にも肯定的な発言があり、この制度がある中で病院を利用するだけで「長生きしたがってる」「しがみついている」と思われるなんて、生きづらすぎる。「人生100年時代」なんて全く言われないだろう。決定を下した国民の代表の皆さんは自分は「必要とされているから」「生産性があるから」絶対に利用しないだろうし、もしくは「潔く」利用したと見せかけて一生雲隠れできる安泰な暮らしをするとか、そんなところだろうと想像がつく。

75過ぎまで慎ましく暮らしていたら、次の仕事が見つからず、住むところもなかなか見つからない。こんな社会による八方塞がりの中で、plan75を選ぶことが自己決定だなんて本当に言えるだろうか?ここまで死ぬことを誘導されて、自分で選択したと思いこまされて、恐ろしすぎる。

あのベッドに横たわった時の、「ここまで来てしまった。もう戻れない」絶望感というか、そこまで行って初めて湧き上がる後悔みたいなものは(死ぬ施術とは規模感が違うのは百も承知で)、整形の手術台で麻酔針が注入されているその時や、売春のその場に来た時と似ている気がした。
「可愛くなれる」「欲しいものが買える」「みんなやってる」みたいな謳い文句で、その場に行き着くまでに手続きがあって、やっぱりやめておきますと断れる段階は一応何段階かあって、それでもここまできてしまったという呆然とした思いがデジャヴする人も多いのではないだろうか。後から考えると100%自己決定ではなく、これまで言われたことや環境、そのハードルの低さから行き着いたのではないか。

全く個人的な話だが、倍賞千恵子のあの上品で矍鑠とした声が自分の祖母にそっくりで、そのことも相まって泣いてしまった。私の祖母は姑からの嫁いびりに耐えきれず一回家を飛び出したことがあったらしい。ミチさんは2度目の結婚を幸せに過ごしたようだったが、そのまま子が出来なかった祖母のifを見ているようで居た堪れなかった。

この映画は怒鳴る老人とかクレーマーの老人とかが出てこなくて、ひたすら、突如退場を促されるようになった我々の未来の存在として共感しやすいように出来ていたと思う。

自分がずっと元気で五体満足だとは全く思っていないので、非常に身につまされる内容だった。
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