開明獣

PLAN 75の開明獣のレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
5.0
これは安楽死の話なんかじゃない。圧による大量虐殺の話しだ。

老人は集団自決しろと傲然と言い放ったイエール大准教授の成田祐輔。それを、老人が今の若者の負担になってると言いたかっただけと擁護した、ひろゆきや、ホリエモン。各主要テレビ局は何事も無かったかのように、成田祐輔を番組に起用し続けている。今の民放には倫理観はないのだろうか?

今の高齢者が若い時に年金を積立ててきたのは、その当時の政府が法律でそうしろと決めたから。高齢になったら、生活出来るお金が年金で出るよと言われて、誠実に勤勉に働いてきちんとお金を納めた結果、支給額は減らされ、挙句の果てには集団自決しろとまで言われる。若者の負担になったのは、政府のせいなのに、老人のせいにするネット・インフルエンサー達。

ネット・インフルエンサー達はネットで集客して年金いらないほど稼げればいいので、自分の稼ぎだけを考えて、ひたすら集客を目指す。10万人が1万円使ってくれれば10億円もの収入になる。50万人が2千円でも、100万人が千円でもいい、同じことだ。彼らのオンラインサロンや、月額のネットニュースサブスク、書籍、そしてサイトや動画を観てくれるだけで広告収入が転がり込んでくる。だから、逆張りや、知識や経験のない層を狙って、出鱈目なことをなるほどと思わせる。

それをバックアップしてるのが、現行政権に、主要各種メディアだ。騙されるのが悪いのじゃない。騙す方が100%悪い。政府、メディア、インフルエンサー、みんなでよってたかって、弱者を食い物にしている。PLAN75を導入した人は、自ら死を選んだのか、それとも今の社会システムに殺されたのか?

少数偏重、弱者切り捨ては、長く続かないのは自明の理なのに、なぜそうするのか?それは、刹那的に今だけよければいいと思っているから。自分たちさえ良ければ、それでいいから。だから理念なんて、塵ほどの価値もない時代になってしまった。未来のことなんてどうでもいい国になってしまった。

PLAN75が導入されても驚きはしない。それが今のこの国のありようなのだと覚悟している。国ガチャというのがあるのなら、今の日本に生まれてしまったのは、先進国の中ではかなりのハズレな気がする。

悲観的なのでも、皮肉屋なのでもないつもりだ。ただただ単純かつ冷静に現状見回せば必然こういう帰結になると気付かされたので、粛々と受け止めるしかない。何事にも始まりがあれば終わりがある。そういうものだ。

終始蒼みがかって沈んだ色の中に、遥かに沸点を超えた怒りが垣間見えるような気がした。
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