Hokkaido

PLAN 75のHokkaidoのネタバレレビュー・内容・結末

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

現代版姥棄て山、楢山節考とでも言った作品です。
静かに、それでいて強烈に抉ってくる、正にエグい作品でした。

救い様の無い物語ではあるものの、変に綺麗事で纏め無いところ、また、派手あるいはエモーショナルな音楽や映像で感情を煽ること無く、鳥の囀りなど日常の環境音が多い作り、
更に、全編を通して感じられる、作り手の寄り添うような眼差し、そして倍賞さんの穏やかな声質によって、刺さりまくりながらも、"胸糞"な印象はありませんでした。

若者についても描かれていますが、こんな希望の無い国では、年齢問わず若者も心を蝕まれ易く、明るい未来は懐き難いかと思います。

派手だったり解りやすい作りではないので、丸呑みだったり表面をなぞる様な観方だと、それこそ表面的にしか伝わらないかも知れません。
壁の裏側や床下がシロアリに喰われ朽ち果てつつある家のようなこの国の現状を認識している方には刺さるのでは無いでしょうか。


以下諸々、、、
・個人的には安楽死や尊厳死に対して否定的ではなく、寧ろ肯定的なスタンスですが、この作品が提示しているものは、それそのものではなく、生きる希望の無い、優しいフリだけで実は冷たい、思いやりの無い社会、そしてそれを産み出しているこの国の心の貧しさだと感じました。

・CAF World Giving Index(世界人助け指数)の調査でも底辺を彷徨う日本、その心の貧しさを産み出しているのは誰なのか、何なのか、改めて考えさせられます。

・その一方で、同調圧力が一際強いとされる日本人、2%未満(金額ベース0.3%未満)とされる不正受給のイメージを全体にあてがい、落伍者やら税金泥棒やらの印象付けをして、唯一のセーフティーネットとも言える生活保護制度という国民の権利を受け難くしたり、出来るだけ受け付けないように役所側もこっそりと操作したり、その点だけでも"PLAN75の基礎部分は既に現実のもの"に感じました。
作品中でも表向きはいつでもプラン75を止められるとしながらも、止めないように持っていくようにエビデンスを残さず《口頭で》指示するシーンがありました。

・"そこのみにて"よりも更に救いの無い、ラストのやるせない朝日が一層印象的でした。

・孤独死、高齢貧困、生活保護、住居確保の難しさ、外国人労働者も来たがらない国になりつつあるこの国の現状とこれからについて、改めて色々と考えさせられます。

・社会保障に使うお金は財源が無いと言いながら、武器を買うお金や海外へ支援するお金は幾らでもある、一方で外国人労働者がいないと経済が回らないと言いながら外国人技能実習制度を悪用し不当労働を強いて大事にせず、結果日本のイメージを低下させる、お金を持っている国なのに生活に苦しむ国民が増え続けている、という矛盾だらけのこの国の異常さを、棄老の切り口から描いているようにも思えました。

※総務省"2022年家計調査 家計収支編"によれば、65歳以上の単身高齢者の消費支出は平均月15万円弱。平均的な厚生年金の手取は月12~13万円。月2万~3万円ほどの赤字になる計算だそうです。

・貰った自転車の後ろのチャイルドシートは外さず残していた所も、細かい所ですが母親の想いが伝わって来ました。

・10万円の仕度金にマイナポイントを想起してしまいました。
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