ククレ

PLAN 75のククレのネタバレレビュー・内容・結末

PLAN 75(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

まず、私自身の「尊厳死」の考え方について。
私は「障がい者福祉」に従事している。重度障がい者と日々関わっているのだが、どんな状態にある人も「生きる」ために支援しないといけないと考える。生きていれば「生きてて良かった」と思うことができるし、それこそが「生きる意味」だと思っている。

しかし、少なからず矛盾するかもしれないが、本人の意志で「安楽死」をする権利もあると思っている。ただし、しっかりとしたカウンセリングを行って確実な「選択」がなされていることを確認することが必須と考える。鬱などで「突発的に」死を選ぶことは誤りだと思うけれど、本人がこれまでの人生に満足した上で、「熟考して冷静に安楽死を選ぶ」ことについては否定できないから…。

つまり法制度や医療システムが完璧に整備された状態でないととても危険。だから、今の日本ではまだまだ難しいと考える。医師だけの判断でALS患者を安楽死させるなんてあり得ない。

今作は淡々と描いていて演出も控えめだけど、とても丁寧に「尊厳死」について語っていると感じた。とても考えさせられた。

以下はネタバレ…







「PLAN75」はホンマにひどい制度やで。明確に年齢を提示してるから、「75歳になったら死になさい」と言っているのと同じやで。同調圧力で「高齢者は社会の負担」と追い込んでくるから、生きている方が「悪」になる。住民票なしでも登録できるなんておかしいやろ。そもそも、認知症を患っている人も多い年齢やで。つまり、意図的に容易に死を選ぶように促してるんやろうな。

安楽死する施設も機械的で「命への尊厳」が感じられないし、外注業者が遺体の処理をするなんて最悪…。働いてるのは外国人労働者。遺品を盗んでる人もいる。

ミチは仕事仲間が孤独死してるのを見て、家族のいない自分の最期が不安になったんやな。独居老人の生活の描写がリアルで、本当に切なかった。

カウンセラーとの関わりが良かった。慎ましく謙虚に生活しているミチと触れ合うと情が移ってしまうわな。でも、この仕事はあくまでも、「心変わりしないように誘導すること」が目的なんだと知って愕然としてる河合優実の表情が秀逸やった。磯村勇斗も揺れ動く気持ちが行動に表れていてとても共感できたけど、なんで遺体を連れ出したのかな?もしかして、あの施設で「安楽死」したら葬式もされないということか?廃棄工場のように処分されてしまうのか?

ラストシーンは、夕陽を見ながらミチが歌を口ずさんでるけど、その未来は暗いで。高齢者が生きるための「システム」がないから、結局またPLAN75に申し込むんやないやろうか…?

ニュースの音声が流れるシーンで、「政府は75歳から65歳への引き下げを…」と言ってた。これが恐ろしいな。
高齢者や障がい者など「援助が必要な人が生きづらい社会」は、「全ての人にとって生きづらい社会になる」ということを忘れてはいけないんやで。
ククレ

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