ゆめちん

僕らの世界が交わるまでのゆめちんのレビュー・感想・評価

僕らの世界が交わるまで(2022年製作の映画)
3.0
僕らの世界が交わるまで
 
"二人とも自己愛が強すぎる"

俳優J・アイゼンバーグの初長編監督作品ということで、繊細な演技が持ち味の彼が、監督としてどのような作品を作ったのか、公開前から楽しみに。
 
DV被害者のためのシェルターを運営する母エヴリンと、インターネットのライブ配信で人気を集める高校生の息子ジギーは、互いのことが分かり合えずにすれ違ってばかりいた。
 
周囲に自分の価値観をゴリゴリ押し付ける母親と、フォロワー数を自慢することしかできず "痛いキャラ" の息子。二人に共通しているのは、とにかく"自分の世界" に溺れ、常に空回りしているところ。そんな二人の行動があまりにも痛々しくて見ていられないが、どこか人間味も感じられ憎めない。

本作は、J・アイゼンバーグの出演作では "イカとクジラ" に近いと感じるが、それを監督として現代風の家族の物語にうまくアレンジしたという印象。影が薄い父親だが、二人の間で絶妙なポジションを取りつつも、家族のことをしっかり理解しているのも今っぽい。ただ最後はきれいに纏まるものの唐突感があったのは否めず、もう少し尺を使って丁寧に描いて欲しかった。

母親役のJ・ムーアの安定感のある演技は言うまでもなく、息子を演じたF・ウォルフハードの端正な顔立ちなのにどこか緩さがあるジギーを妙演。逆に彼が好きになるライラ役のアリーシャ・ボーの落ち着いた演技が心に残る。
 
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