ゆめちん

パスト ライブス/再会のゆめちんのレビュー・感想・評価

パスト ライブス/再会(2023年製作の映画)
4.5
パスト ライブス/再会
 
アカデミー賞の作品賞と脚本賞にノミネートされた本作。公開前から非常に楽しみに。
 
ソウルに暮らす12歳のナヨン(ノラ)とヘソンはお互いに惹かれ合っていたが、ナヨンが海外に移住したことで離れ離れになってしまう。12年後、ニューヨークとソウルでそれぞれの道を歩んでいた二人は、オンライン上で再会を果たす。
 
韓国とアメリカという距離の壁に隔てられた幼馴染み二人の関係と、それぞれの異なる人生の物語で、"上質な大人の映画" を観たという感覚に。セリーヌ・ソン監督のデビュー作にも関わらず、これほど洗練された作品を作ったことにまずは驚かされる。
 
監督自身の個人的な体験に基づいた物語なのに、不思議と共感することができる。互いに好きなのに人生のタイミングが合わず結ばれなかったという経験がある人ならば、本作と重なりグッとくるのでは。
 
ナヨンとヘソン、そしてナヨンの夫アーサー、三人三様の想いがスクリーンを通してストレートに伝わってくる。
冒頭のバー・カウンタのシーンから想像力を掻き立てる演出が何とも巧妙。ラストは音楽の効果も相まって、タイトルの "パスト ライブス" が絡む台詞とともに、それぞれの切なくもやるせない感情が心に沁みてくる。
 
観終わると、この作品はやはりアーサーの存在が大きく、彼の "包容力" というか "懐の深さ" がなければ、本作は成立しないと感じる。そんなアーサーを演じたジョン・マガロの抑えた演技がやはり光る。
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