ザ・ホエールのタカのレビュー・感想・評価

「語り手は自らの暗い物語を先送りにする」

ソファに陣取って身動きの取れない巨大な体躯
パートナーを救済できなかった贖罪が彼の心を蝕み
制御不能の食欲が肉体さえも冒す
死ぬ前に信じたいこと
たった一度でも正しいことをしたという実感
それもまた贖罪
かつて見捨てた我が子を信じること
他人に対してはポジティブな思考が
自分に対してはネガティブに転じる
死期が迫るその間際
耳に流れるエッセイは信じた末の救済
立ち上がる巨体から発せられる喘鳴
鳴き声を上げる白鯨を彷彿とさせ
その奇跡は天上へ昇る