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ザ・ホエールのAyaxのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
3.6
かなり感想が難しい。「イニシェリン島の精霊」より考えがまとまらず、自分なりに咀嚼するのに3日くらいかかってしまった。
「レスラー」を観てないので、初ダーレン・アロノフスキーかと思いきや、「ブラック・スワン」は観てたわ。ちなみに「ブラック・スワン」はあまり面白いと思わなかった。
聖書とかアメリカの小説『白鯨』を題材にしていて、『白鯨』は未読だわ、キリスト教の素地もないわで、私にはすっと入ってこないタイプの話。Don't think! Feel!なのかもしれないけど、私はそこまでFeelするとこはなかったかな。回によっては拍手が起きるところもあったらしいので、刺さる人にはぶっ刺さるのだと思う。
娘を愛してるのに妻とは別の人との恋愛に走ってしまったチャーリー、チャーリーを助けたいのにフライドチキンやチーズミートボールなどジャンクフードを与えてしまうリズ、父親に愛されたいのにひどい態度をとってしまうエリー、金を奪って家を飛び出したのに戻ってこいと言われて喜んでしまうトーマス。人って矛盾や葛藤を抱えていて、ときにはそれで罪悪感を持ったりする生き物だ。罪悪感を感じても、一般的(もしくは宗教的)に善でない行いをしたとしても、自分を偽らず正直に生きてというメッセージかなあ。
あと、信仰は人を救いもするけど、傷つけもするよねという話でもあると思う。この映画ではミクロ的な話だけど、マクロ的に見たら戦争とかもそう。信仰は本当に人を救うのか?
そこでもう一つの人を救える可能性があるものとして語られるのが人間(≒愛)。私は信仰心が0なので、信仰と人間なら後者一択なんだけど、人は気まぐれだし、ときに裏切るし、一筋縄ではいかないという難しさがある。それでも通じた合えたときに本当の意味で救われるのかもという話のように感じた。そう考えると、不確かなものとか無理〜という人は宗教とか信仰の方が揺るがなくて合ってるのかもしれないね。どちらか選べということではないし、他にもいろんな解釈ができると思う。
これに同性愛やファットフォビア(肥満恐怖症)という要素も絡んできてかなり複雑な内容になってるし、メッセージをはっきり描写してくれないので難易度高め。題材的にもキリスト教が身近でない日本人にはピンときづらい映画だと思う。
でも、この話について考えていてふと思っっちゃったのは、裏切らなさでいったら、筋トレ(適度な運動)と睡眠が最強じゃない?ということ(多分そういう話じゃない)。
ダーレン・アロノフスキーのインタビューをちょっと読んだら、本作のテーマ(の一つとして)は「本の中身をカバーで判断してはならない」だとポロッと言ってる。もっとインタビュー読んでみたいけど、日本語の記事は少ないな。
観てるときは気にしてなかったけど、画角が4:3だったらしく(幅が狭い)、チャーリーの巨体が部屋にみちっと収まってる感じを強調してたかもしれない。
ブレンダン・フレイザーについては、272kgの男を演じたからアカデミー賞の主演男優賞にノミネートされたのかなと思ってたけど、それだけじゃなくて本当に演技が凄まじかった。迫真のってああいうのを言うんだと思う。肉体はファットスーツを着て特殊メイクを施したとして、太ってる人の声ってどうやって出したのかなあと気になった。
「ザ・メニュー」にも出てたホン・チャウの演技も素晴らしかったし、娘のセイディー・シンクもかわいい。
最後に浮く演出は私的にはちょっといきなりダサく見えた。
いっぱい考えたし、書いたけど、好きか嫌いかで言うと全然好きじゃないかな。
みんな、筋トレしてたくさん寝よう。
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