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マッドマックス:フュリオサのAyaxのレビュー・感想・評価

3.9
前作に負けず劣らずの狂気を感じる画力。情報過多!!車やキャラクター、世界観が唯一無二のデザインで相変わらずの凄まじさ。一回で受け止めきれず、2日連続で鑑賞(連続になったのは単純に安い日が続いたからだけど)。
前作のシャーリーズ・セロン演じるフュリオサが、映画史上、人類史上、地球上で最高&最強のヒューマンだったので、続編で、しかもフュリオサの前日譚で、主演がシャーリーズ・セロンじゃないというところで、前作を観た人は相当抵抗があったはず。そんなことが許されるの?許されるわけないだろ!!っていう。シャーリーズ・セロン以外のフュリオサなんて考えられない。
なので観るのがちょっと怖かったけど、蓋を開けてみたら案外大丈夫であった。アニャ・テイラー=ジョイの演技力もあるのだろうけど、目から上を黒く塗ってたり、顔を隠してるシーンも多くてそこまで違和感なし。シャーリーズ・セロンへの思い入れ強者が多い中、そのレベルまで持っていけただけで大合格では?あと、細かいけど、歩き方も似せてたと思う。腰で歩く感じと肩のシルエット。伝わるかな。
フュリオサ子役の子が途中で大人になるわけだけど、3章でどこからアニャ・テイラー=ジョイになったのかが不思議で、調べたところ、CGで子役の子の顔を35〜80%の比率で、アニャ・テイラー=ジョイの顔を混ぜて調整してるらしい。DJみたいに。へー。
ジョージ・ミラー監督はできるだけCGとか使いたくない人のようで、それでシャーリーズ・セロン続投ではなくアニャ・テイラー=ジョイが主演に抜擢されたみたいなんだけど、そこでCG使うならシャーリーズ・セロンでも全然いけたのでは?とも思ってしまう。「アイリッシュマン」のCGを見て、若返らせるのは無理があるなと思ったらしい。でもシャーリーズ・セロンならいけたはず。お爺さんを若返らせるわけじゃないんだから。いや、でもアニャ・テイラー=ジョイはがんばったよ。でもやっぱりシャーリーズ・セロンで観たかった。という堂々巡り。だって前作(怒りのデスロード)の数年前までの話かと思ったら、直前まででそのまま前作に繋がるラストだからね。シャーリーズ・セロンでいいじゃん。
そういう意味(ダイレクトに繋がっている)で前作と比較してどうのこうのという位置づけの作品ではなく、前作とセットで、前作の話をより膨らませる作品だと思う。いきなり「フュリオサ」から観てもダメではないけど、私的には前作は観ていた方がいいと思った。前作ありき。どっちも観て!
クリス・ヘムズワースはここまでの悪役は初めてなのでは?新境地。陽キャでちょっと頭悪そうな感じがハマっていた。ガスタウンのおっさんのベストちゃっかり着てたり。彼と比べると、イモータン・ジョーが知将という感じで対比も良かった。イモータン・ジョーがちょっとマシに見えるのよ。ちなみにディメンタスとジャックはオーストラリアのアクセントで話してるように聞こえて、調べたらクリヘムってオーストラリア出身なのね。他のキャストもオーストラリア出身の人が多そう。「ガーディアンズ」とか小ネタっぽい台詞も結構あった気がする。クリヘムはマントを着けるのに抵抗があったらしいのだけど(ソーを想起させるので)、監督に全然大丈夫と言われて、渋々着けたらしい。
前作の5秒前くらいまでいく話なので、イモータン・ジョーを始め、多くの魅力的なキャラクターが続投してるのも良かった。続投ではないけど、あのウォータンクの野菜室の子は一体何なんだってくらい良かった。ビジュアル最高すぎかよ。
車両のデザインももちろんすべて良くて、ウォータンクは美しいし、ディメンタスの馬車みたいなバイクに手綱付けたバカっぽい乗り物も面白い。派手ではないけどクライマックスのマネキンが付いたキモいバイクとか、モブっぽいキャラのバイクにもサッカーボールが付いてたりして、この世界では気に入ったガラクタを自分のバイクに付けるのが流行ってたのかなとか思ったり。
撮影的にはやっぱり3章のカーチェイスが面白くて、CGほぼ使ってなくてあのパラセーリングのカメラワークとかどうなってんの?っていうくらいすごい。すごすぎ。
有名な話だけど、ジョージ・ミラー監督はオーストラリアで救命救急医として働いていた経験があって、なので、人間が喉笛を掻っ捌かれたらどうなるか、片腕がちぎれたらどうなるかみたいなシーンに説得力があるよね。
そして、彼が描く「マッドマックス」の世界って一見狂ってるんだけど、世界観のバックグラウンドや登場人物の過去がきちんと考えられていて、それが映画全体の厚みを増させてると思う。そういう作り込みのアプローチが、ちょっと宮崎駿みたいだなと思った。
クライマックスで、フュリオサがディメンタスに俺とお前は同じだって言われて、違うということを証明するために、ワイブスを助けに行ったんだなと思うと素晴らしい。誰かのために生きる道を選んだフュリオサ大隊長なのであった。復讐にしか生きる意味を見出だせなかった彼女の二度目の人生が走り出す。感動。そして、片腕の怒れる闘将が爆誕。完。
観終わった後すぐに「怒りのデスロード」を観たくなるし、それ観てまた「フュリオサ」を観たいってなる。現実世界で大きめのはたらく車を見ると「マッドマックス!!」って思ってしまう病気。
ちょっとだけ苦言を呈すと、子供時代がちょっと長かった。アニャ・テイラー=ジョイが出てくるまでにやや時間かかり過ぎ。あと、フュリオサのトレードマークでもある義手を終盤サラッと作ってしまっていて、そこはもうちょっとエピソードがあっても良かったのでは?と思った。
前作ではオーストラリアの砂漠で撮影の予定が、撮影前に大雨が降りお花畑になってしまったので、ナミビアで撮影したらしい。お花畑の写真見たけどめちゃめちゃきれいに咲き誇っててこれは無理だわって感じだった。そしてトム・ハーディが来なかったとかいろいろあったらしい(シャーリーズ・セロンとトム・ハーディのスタントダブルが結婚するなど!すごい職場結婚)。そして、今回は前作から9年を経て(ビビる)、温暖化の影響でオーストラリアの砂漠化が進行し、皮肉にも予定通り撮影できてしまったのだそう。
あと、ジャックがこっちに向かって歩いてくるシーンは、もろ「マッドマックス2」って思ったよね。ジャックのことをジェネリック・マックスと言ってる人がいて笑っちゃった。
2回ともIMAXで鑑賞。最高レベルの映画館で観る必要はないかもだけど、当然映画館で観た方が良い。
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