胸糞鬱不条理大好き

ザ・ホエールの胸糞鬱不条理大好きのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

何年かぶりに映画を観てボロ泣きしました。

身勝手かつ弱さをもつ人間臭い主人公の、ある種 利己的かつかなり個人的な自己救済物語といった感じでしょうか。

妻子を捨てボーイフレンドとの生活を選んだものの、恋人の死に傷つき過食に走り270kgの巨体になったチャーリー。
病院に行くつもりもなく、まるで自傷行為のように食べ物を口に押し込んでいく。余命幾ばくかとなったとき、8年疎遠になっていた娘と交流を持とうとするが、娘は家族と学校生活に問題を抱えている。

巨漢が主人公なので、ほぼほぼ絵的な盛り上がりが見込めないであろう会話劇の映画でこんなに高評価なのは期待値高い!と視聴し、全く裏切られなかった。
そして、まさかのダーレン・アロノフスキー監督の作品だったとは。気になる作品を見つけると、好きな監督だったパターン度々おこりませんか?
「ブラックスワン」も大好きで号泣したのですが、自己救済というラストがとても似ていると思いました。
また、この作品は適した役者が見つからないということで長期間ずっと温められていたそう。ハムナプトラでもよく知られるブレンダン・フレイザー、暫く干されていた事を全く知らなかったのだけど、彼のエピソードを調べると、この人だからこそこんなに泣かされたのかと納得してしまうような最高の配役だった。
悲しい目や声に胸がグッとくるわけです。

タイトルと小説「白鯨」のエッセイに関するエピソードから、白鯨のストーリーに登場人物が投影されていることがわかります。私は未読了でしたが、それでも大事な投影ポイントは映画内だけでもしっかりつかめたし、後で白鯨について調べると、より理解が深まる気がします。

そして音楽がまた非常に良くて、主人公チャーリーの感情の高まるシーンで流れる音楽にこちらも感情が煽られて涙がボロボロ出てくる出てくる。

ラストも皮肉っぽさを感じるような演出で、だからこそ強烈に印象に残りました。
現実的な演出がずっと続いていたのに、最後の最後であの光景。
宗教に最愛の人を奪われ宗教的な救済を求めていないチャーリーが救済されるラスト。後光が指して娘エリーがまるで天使か神のように見え、チャーリーにとって許しを与えるようなエッセイをエリーが読み上げ微笑み合い、昇天する瞬間。あからさまな宗教的表現で、雰囲気がガラッと変わったからこそ救済のインパクトが強く伝わり、またもボロ泣き。

もともと舞台劇らしく、そちらも鑑賞してみたいと興味の幅が広がる作品です。いい作品見れて幸せー!