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私は世界一幸運よのtmcてむしーのレビュー・感想・評価

私は世界一幸運よ(2022年製作の映画)
3.4
2022年80本目

ストーリー
NYでライターをしているアーニーは、順風満帆な生活を送る完璧な女。
しかし、過去のある事件についてのドキュメンタリーへの出演依頼から、彼女は人生の暗い部分と向き合うことになる。

***

映画全体を通して彼女の独白的なナレーションが入る。
彼女の心情を言葉で表してくれるのはありがたいけど、最初のうちは彼女のとがった思考が入って来るのでどういう話?とちょっと混乱した。

主人公のアーニー・ファネーリはイケメン金持ちで完璧な婚約者を持つ女性で、ここまでくるのに多くの犠牲を払ってきた。
自身も向上心が強く自分をよく見せることに長けていて、そんな二人は結婚式を控えている…
まさに順風満帆な様子と裏腹に、彼女の心の声は物騒で攻撃的で自虐的な皮肉を言う。
彼女は周りから「あの事件の…生き残りの…」と言われるたびに腫れものを扱うように接されていて、観客は「あの事件」が何なのかと想像させられる。

物語は彼女にドキュメンタリー出演の依頼が来るあたりから、どんどん彼女の過去に迫っていく。
彼女が高校時代に巻き込まれた銃撃事件と、その当時の回りの反応や、彼女に起こった出来事が語られていく。

彼女が過去を回想するたび、現代の彼女と周りの間にゆがみが生じていく。
完璧だったはずの婚約者は「だって曲は好きだろ?」と児童性愛者の歌を結婚式で流すと言い、彼女はそれに激怒する。
男がというつもりはないが、性被害に遭わないと思っている人間は被害者のことなんて見えないから、加害者(強者)側に共鳴することがままあるよなと絶望的な気持ちにすらなる。
限定的な相手にしか向けられない愛情ややさしさに反吐が出る。

その後も、彼女の思考と行動はどんどん内面と合致してくる。
今まで流せていたことや秘められていた怒りが知らない間に完璧な女の皮を突き破って出てくる。

彼女は人生を選択する岐路に立たされ、選択をする。
誰かの正義は誰かにとっての悪であり、行動を起こすということは被害者であっても「加害者」と認定されることなんだと思った。
誰しもが被害に寄り添ってくれるわけではない世の中で、自分を強く持つことや過去の自分を認めることがどれだけ難しいことか。
ティファニーが幸せに過ごしてくれれば良いと思えるラストだった。