背骨

NOPE/ノープの背骨のレビュー・感想・評価

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)
4.5
眼差しの加虐性、その視線に蔑みを感じた時、見る者と見られる者の立場は逆転する。

『NOPE ノープ』は見る事=撮る事(映画)にまつわる愛と自己批判の映画ではないか。撮る事、それは時に見世物にする事…

・ジュープとゴーディ
お互いお茶の間のアイドルでありながら、奇異の目(どこか蔑みを含んだ)で見られている存在。マイノリティであるジュープはあの事件をきっかけに、その事に気づいてしまったのではないか。自分はゴーディと一緒なのではないかと…

彼は今もその事について考えている。あの時と同じようにまっすぐに立ち上がった女の子の靴を見つめながら。見られる事で得られる恍惚と、それと同時に感じる得もいわれぬ嫌悪感について…

しかし、彼は考えていなかった。まさか自分が逆の立場になるなんて

彼はアレを見世物にした、それゆえの結末。姿を変えたゴーディに襲われるように…

・ヘイウッド兄妹と飛行体
おそらくは飛行体が先に監視をはじめた。しかし、その存在に気づいた兄妹は監視カメラを設置する。ここで起きる見つめる者と見つめられる者の立場の逆転。

本来なら飛行体を見世物にした彼らは飲み込まれるはずだった。しかし結果を変えたのは彼らが考え方、目的を変えたから。
「飛行体を監視し、白日のもとに晒す」事から「のちに生きる誰かのために… 」へと

・ジョーダン・ピールと映画
「見つめる視線(撮る事=映画)は人を傷つける事もあるが、誰かを助ける事もある」

鉄馬を駆るエメラルドの姿に人類初の映画が重なり、アキラターンを決めた後の彼女の叫びは「映画は絶対負けない宣言」にしか聞こえない。

『NOPE ノープ』は全ての映画、映画の作り手、映画を愛する者へ捧げる映画でもあるだろう

「映画はこのまま死ぬのか?」
「NOPE ノープ!」
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