予想を遥かに上回る大傑作。
『ホットギミック ガールミーツボーイ』『いなくなれ、群青』と並んで2019年青春恋愛映画の三大傑作と呼びたい。
未だに日本のマンガ実写化映画、青春恋愛映画はつまらないと思われている「数年前から鑑賞履歴とイメージが更新されていない」方にこそ観てほしい。
きっと日本の青春映画の新たな潮流を感じると思う。
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自分という不確かな存在に怯えていた彼らが、誰かを本当に好きになる事で初めて世界と繋がるストーリー。
「君が死んでも世界は変わらないよ、そんな事より未来の話をしよう。」と繰り返されるメッセージ。
そこには青春の痛みも喜びも全て詰まっている。
死にたい「なな」と殺すぞが口癖の「れい」
世界中から愛されたい「きゃぴ子」と誰か一人から愛されたい「地味子」
毎日告白し続ける「撫子ちゃん」と断り続ける「八千代」
優しくて愛すべきキャラクターたち。
その名前が示す通りのキャラクターたちが実はそれ以上のものを抱えている事がわかってくるストーリーはシンプルでありながら複雑さと奥行きを感じさせる。劇的な展開や大袈裟な演技がなくても自然に関係性が深まっていく描写も心地いい。
この映画はすでに言われいるように泣ける。
ただ、後半のいわゆる泣けるシーンが良いのではなくて、そこまでの文語体のようなやりとりなのにこちらとの地続き感を感じさせるリアルでファンタジーな日常の積み重ねが良いのだ。
事件や出来事ではなく、当たり前の日常の裏に込められている愛に泣くのだ。
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これ以上ないキャスティングと演出に応えるキャスト陣がみんな素晴らしい。
この映画独特の世界観は彼らの存在なくしてはあり得なかった。
主要6人をキャスティングしてくれた人、彼女たちからあのような素晴らしい演技を引き出してくれた小林啓一監督、そしてもちろんにもキャスト陣にも賞賛しかない。
中でも桜井日奈子ちゃんには驚いた。
正直、今まで彼女を女優として見くびっていた。
冒頭の病んで内にこもっているような“死にたい”「なな」から未来に目を向けた“死なない”「なな」へ。
主演女優賞あげたくなるような素晴らしさだった。
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今はこの映画の事をずっと考えていたい。
原作も何度も読み返したい。
映画も何度も観に行きたい。
撫子ちゃんのように毎日好きと言いたい。