150年以上前の原作を、完全に「今の映画」として再構成した見事なリブート版『若草物語』
この映画は決して安っぽいフェミ映画などではなく、もっと大きな視点、人種や性別、年齢や時代をも超えて、あらゆる価値観を持った人々が「自分らしく」それぞれの生き方を選択していけるように」との祈りを捧げているような映画だ。
それはこの映画が、ジョーを中心とした四姉妹の物語でありながら、それとほぼ同等にティモシー・シャラメ演じるローリーの物語になっているところにも表れている。
そうした性別を問わない多角的な視点を取り入れることでどちらか一方の価値観に偏らないようにし、紋切り型の物申す映画に陥ってしまう事を回避している。
さらに、「抑圧された社会に“怒り”をぶつけるのではなく、“やさしさ”と“したたかさ”と“ユーモア”で対抗していく」とのスタンスが貫かれており、この辺りもグレタ・ガーウィグが素晴らしい人格者であるであろうことをうかがわせる。
『レディバード』でも発揮されていたハイテンポながらエモーショナルな演出とキレのいい編集がさらに進化していて、映画をさらに豊かなものにしている。
脚本の素晴らしさと共に映像・編集面でも飽きさせない、どころか大満足しかない傑作でしょう。
個人的にはアカデミー賞作品賞候補作品の中で一番好きな映画です。