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かがみの孤城のほのレビュー・感想・評価

かがみの孤城(2022年製作の映画)
3.4
演出がリアル寄りなのは、描きたいことに誠実に向き合っていて、それらを大袈裟に誇張したり、面白おかしくしたくないからなのかもしれないが、それによって映画のダイナミックさは失われていた。それゆえにこの映画は当事者だけのものになってしまっている。
物語を映画にするなら、まず惹きつける必要がある。ただこの映画は徹底して惹きつけることを意図的に遠ざけていたような気がする。カメラは常に被写体からある程度の距離を保っていて、目線より少し下の横位置から狙われ、客観的に彼らを見せることを意識したカット割となっていた。でもそれは僕ら観客にとっては彼らに起こっている問題を遠ざけることに貢献してしまっていたのではないか。もっと自分ごととして、彼らの苦しみに巻き込んで欲しかったけれど、そういうつくりになっていなかった。
だから終始、彼らの苦しみをどこか他人事だと思って観てしまっていた。
サプライズになる仕掛けも普通に観ていたら予想がつくし、映画的面白さを感じるには物足りない。だからこそ、キャラクターの感情に乗らせて欲しかったのだが、採用されている映像演出によってこちらは一歩引いてみるハメになってしまった。
違う映し方、演出ならもう少し興味を持って観られたかもしれない。
ほ