バービーのほのネタバレレビュー・内容・結末

女性社会であるバービーランドは男性社会である現実世界の表現で、そこで虐げられるケンはまさに男性社会の女性の姿であり、現実世界の風刺。
そこからケンが男性性を獲得して、バービーランドを男社会に塗り替えていく姿は、これまた現実世界で起こっていることだが、結局男性中心の社会が女性中心の社会に置き換わるだけで、どちらかの性別を虐げる構造は変わらない。
また別軸で、「女性の理想像」や「男性の理想像」を誰かによって形作られ、それが彼ら彼女らをその性別の存在たらしめていることが皮肉的に描かれる。
この物語はさらにそこから、そういう矛盾や性別による地位や性格・嗜好までも決定してくる息苦しい世界をどう生きるかを問う。
しかしながら…、その現実世界の構造や問題をどう変えるかではなく、ありたいようにあれ生きたいように生きろという結論（？）で終わっているように感じられたのがなんとも物足りず、そもそも白い空間で老婆と話すシーンはなんとも退屈で気持ちが離れてしまった。

現実世界の男性の立ち位置とバービーランドの女性の立ち位置が置き換えている表現や話していることの奥にある批判は興味深く受け取れたが、批判や風刺や皮肉のために、キャラクターが突拍子もないことを話して、衝動的に行動していく点が、映画としては全然好きではなかったな。単純に、表現として好みでなかったな。
あと、（権威的な）男性は滑稽に描いて良いという感じも、結局誰かを貶めているという点であまり気分の良いものではなかった。権威にあぐらをかく人間は、自己批判的でない点で責められるべきだが、彼らも結局、この世界に最適化して生きてきたに過ぎず、彼らを彼ら的な存在たらしめているのは現実の社会構造であって、それが良くないだけなのだろうと感じるからだ。