タカ

さかなのこのタカのレビュー・感想・評価

さかなのこ(2022年製作の映画)
4.2
「お魚のことが好きでお魚の絵を描く、それでいいんです」

ぷかぷかと
ゆらゆらと
ずっ〜〜〜と揺られていたい
このまま身を任せていたい
そんな風に思わせる
そんな映画だった

沖田監督の温かくシュールな世界
最初のうちは水温に慣れずギョッと違和感があるが、心地よく漂ううちにのめり込む世界
いつの間にやら没入してしまうのはなぜだろう
苦しいとか辛いとか
そんなストレスを課せられる展開が無いからかもしれない
「男か女かはどっちでもいい」
そんなメッセージが冒頭で流れた時から
そして"好き"を貫いていくミー坊の姿を追っていくうちに
何もかもが許容される優しさに魅了されるのだろう
どっちでもいいし、どっちもいい
何でもいいし、何だっていい
そうあるべきなんだと思う

「何かの主人公みたいだよな」
好きなものかそれ以外かだけで生きているミー坊は周りを惹きつける
誰も彼もが変わっていくなかで変わらないのは
やはり魅力的
不良軍団に絡まれても自分のペースで居るから、逆にあちら側からペースを寄せてくる
絶対交わらないように見えるのに仲良くなっていくのが、すごく良い展開
軍団抗争のシュールさも大好きで思わず声(ボリュームは小さくですよ)を出して笑ってしまった
結局、中心にいるのはミー坊であって魚でもある
カミソリ籾がアオリイカの旨さに感動してる顔が何とも良い

「普通って何?ミー坊よく分かんない」
ミー坊とモモコの関係
不思議だなって感じる時点で普通か否かの線引きをしてしまっている
でも
「何も聞かないの?」に「何か聞いた方がいいの?」とナチュラルに返せる人でありたいな

何をやってもしっくり来ないミー坊が周りの助けられながら支えられながら"おさかな"博士になっていく姿にほっこりと感動する
あぁ良かったねという余韻とまだ観ていたかったなぁという余韻が残り
もう沖田監督の最新作だけ追っかけ続けられたら、それだけで良いや
という思いにさえなった

めずらしく購入したパンフレットを読みながら、余韻に浸ったまま今日は寝てしまおう
ぷかぷかと夢の中で揺られながら
タカ

タカ