しょっさん

“それ”がいる森のしょっさんのネタバレレビュー・内容・結末

“それ”がいる森(2022年製作の映画)
1.4

このレビューはネタバレを含みます

久しぶりに救いがたい何かに出会ってしまった。
ついでに、NOPE の後だというのが、さらに追い打ちをかけてしまった。本当にひどかった。

今年一番にひどい映画は、もう「大怪獣のあとしまつ」一択だと思っていたんだけど、もう、完全に二強。というか、こっちのほうが遥かに強い。名声とギャップから行けば大怪獣のほうがインパクトはあるかもしれないけど。それでも大怪獣は、豪華キャストやVFXの強さもあって、役者の演技が良いとか、無駄にエフェクトかっこいいとか褒められるべきところがあった。予算のついた映画は強い。

かなり時間をおいて、色々と考えたんだけど、この映画というかお遊戯会には何も良いところがなかった。え、コレが中田秀夫?ウソでしょ?
とか思ったけど、嘘喰いも彼だと思ったら、しょぼいのはここ最近のサガか。俳優殺しだな、しかし。

そして、ホラーと言うけど、内容はただのパニック映画。宇宙人でごまかしに来るとは思わなかった。NOPE の直後だから、NOPE 日本語版かと思った。

何はともあれ、リアリティが一切ない。クリーチャーがいることをリアルだと言っているのではなく、人の行動も、考え方も、クリーチャーがいたとしてのリアリティがまるで無い。NOPE もちょっとひどいなとは思ったけど、リアリティはコレよりも断然あった。

「それ」と揶揄される宇宙人は、地球の子どもの成長遺伝子により、宇宙人本体の成長が可能。分裂までする。にもかかわらず、60年前に一度来た記録と、今回だけで 3人の子どもしか餌食になっていない。そして、この宇宙人強そうなんだけど、オレンジに弱い。まぁ弱点はあっても良いんだけど。鉄の扉をぶち抜くような爪と腕があるのに、刃物でカンタンにかっさばかれてる。拳銃持ってた多くの警察官を倒しきっているのに?

宇宙船が降りたところは、超高温度でクレーターができているのに、木々は燃えたりなぎ倒されない。一度、宇宙船が宇宙に戻っていく描写あるけど、あんなの絶対に誰か気がつくだろう。それくらいド派手なのに、クレーターはできても、木々はそのまま。どうして。

そしてこの宇宙人、なぜこの山に来るのかわからない。よくわからないことは他にもたくさんある。なぜ、大人は見かけたら殺すのか。一度だけ誤って、大人たる相葉くん一緒に取り込んだときもあるけど、とりあえず殺す意味がわからない。アシダカ軍曹か。そして、瞬間移動的な動作を行うこともできるようだし、子供のいるところを何らかの方法で認識して、学校に目をつけることはできたし、体育館の地下まで迷わず行けるのに、落とし穴に引っかかる。地下には窓から出られるから、そっちから行けばいいのに、鉄の扉を壊しにかかる。よく考えたら、そんなに子どもいっぱいいるとこわかるなら、福島県には行かないよな。

オレンジが苦手なのに、なぜ彼らは何度となく、相葉くんのオレンジビニールハウスに来るのか。あんな奥まで行ったら、オレンジぶつかってるだろ。気がつくよな。

警察などお役所なんて役に立たない、俺がやってやるぜ的な意向は認めるけど、いくらなんでもバカにし過ぎだと思う。むしろ、あの写真を元に警察だけじゃなく、自衛隊を動員しての人間vs宇宙人とかやってれば、胸熱だったのに。シン・ゴジラはそのバカを大真面目にやったから、最高に良かったわけだ。そのバカを、ほんとにバカにしてしまった大怪獣はひどかったわけだ。

脚本云々以前に設定がガバガバすぎる。子どもでもおかしいと思うレベル。

他でも書いたけど、ホラー映画なのに人物の心情が描けていないし、普通の人間とは異なる行動をおかしすぎる。ホラー度外視。リング作ったの誰だったっけ。原作の良さの問題なのか、どういうことなのかわからない、ちょっとおかしい。Jホラーからの脱皮みたいなこと言ってたけど、コレの方向性としては、ただのハリウッドでよくある宇宙人SFパニック映画。ID4 ってすげぇなって思い出して感心して崇拝するレベル。もうね、この宇宙人に意思が見つからないんです。行動に理由が見当たらない。

設定も脚本もひどいけど、演技もひどい。山田涼介ってすげえなって違う感心しちゃったわ。演技の良し悪しの格差がすごすぎて、違和感がすごい。監督は母親の情愛がどうのみたいなの言ってるけど、全然もう設定からおかしいし、それを演技に結びつけていないから。

映像もおかしい。「暗くなってきたから」って言うなら、暗くしろ。嘘喰いのときもそうだけど、ただ森を彷徨えば、それなりの雰囲気になるだろうというのは大間違い。むしろ、裏山っぽいダサさが目に見えてひどい。インディーズのホラー映画のほうが、映像はよくできてた。とにかく明るすぎるし、キレイすぎる。ホラー映画でやったら駄目だろ、それ。

一番がっかりするのが VFX というか CG というか、もう平成の特撮以下だろコレ。宇宙人でもなんでもいいんだけど、はっきりさせすぎる。もっとはっきりしてなくていいし、もっと不可解な動きしていいし、なんなら見せなくていい。なぜ見せた。寄生獣かと思ったけど、見た目は寄生獣のほうがまるで怖い。漫画の一コマに負けてる。そこまで見せるならやっぱり、自衛隊とドンパチしてほしかった。しかし、どんぱちするには宇宙人が少なすぎる。最初多分 2体で 3体に増えた。その 3体が小学校へ...あれ、1体は宇宙船に戻ったけど、2体、小学校にいるはずなのに 1体しかいなかったぞ、おかしいな...。宇宙船の前で分裂したの、実は分裂じゃなくてテレポートだったんか、いやそんなことないだろ。思い出せば、思い出すほど不可解すぎる。

音も特徴がないので、何も覚えてない。もうほんとびっくりした。もっともっと予算のないカルマカルトのほうが映像ふくめてよくできてた。あっちもなぜ?が多かったけど、こっちほどでもない。NOPE もコメディになってたけど、UFO 自体の扱い方はとても良かった。

もうホントにびっくりした。

※ 追記。サメ映画界隈で評判が高いっていうのを聞いて、なるほどって理解した。その界隈の人にはきっとおすすめ。