おさつ

ザリガニの鳴くところのおさつのレビュー・感想・評価

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)
3.4
友人のススメで鑑賞。
湿地の変死体、ミステリー、ポスターの色味から言って仄暗い作品の印象があったけど、
冒頭で「湿地は光の世界」と言っている通り、自然の様子はとても美しかった。

事件を軸にしつつも、メインは人間ドラマ。
心理描写がとても細やかで、時にカイアに共感して胃を痛め、時に見守る商店夫妻などに共感して憐憫の涙が出る。

あ、でも見守ってるとしてもタイラは共感外です。笑
父親はびっくりする常識といたり現実的じゃないくらい毒親に思えるけど、
男2人は絶妙にいそうな感じがタチが悪い。
チェイスは登場した瞬間から漂うモラハラ感に、ロマンスシーンさえイライラした。

タイラとの序盤のロマンスシーンはキラキラしていて暖かい気持ちになったけど、
1ヶ月でブッチ早すぎからの5年音信不通は当時25歳ぐらいのカイアにとって長すぎだし、よく許せたなぁ。後半のロマンスシーンには疑問も残ってしまった。笑

カイアはある種、男のロマンの具現化のような女性なんだろうなぁ。
小説などに出る、異郷の女。
ミステリアスで美しく、知性の色気もある。
同時に世間に無知で、他に縋るものがなく、「俺がいなきゃだめな、守ってやりたい存在」(本人の意向に関わらず)。
タイラとチェイスの善悪の性質はともかく、そこには同情と優越感、自尊心の高まりはあると思う。
この古典的で舞台装置のような女性像を主観として描くのも珍しい気がした。

最後にはカイアも、周囲の同情を自覚し、上手く使ってもいるけど、本人は善悪のほどには興味がなさそう。

善悪通り越して、自然として生きた女。
カマキリの話に意味があったとはね!
もしかしたら、これを言ったときに心が決まったのかも。

死体の存在意義あんまりないのでは?と思ったけど最後はちゃんとサスペンス回収。
けど丁寧な心情描写のおかげで、真相が分かったあとも犯人への印象は変わらない。
事実それだけをスッと受け入れられた。

綺麗な終わり方。
EDの歌詞もカイアの心境を表してて良い。
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