おさつ

哀れなるものたちのおさつのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

個人的にかなり好みでした。

まず映像。
序盤のベラが横たわるシーンはベルニーニの彫刻みたいに美しい。
近世イギリスの設定だと思うけど、服装や街並みは幻想的で奇妙で鮮やか、モローやシャガール、ダリの絵を見た時のような陶酔感が得られた。
色彩がない序盤も、むしろ精緻なコントラストと構図に集中力が高まる。
音楽の使い方や、演劇のような独特の間のあるカットもいい。絵本やストップモーションぽくも思える。
大人のアリスインワンダーランドみたい

エマストーンも快演だなぁ。
ベラの童心ゆえの純粋さ、グロデスクさは惹きつけられるものがある。
「美しい痴人」は純文学とかでもちらほら見る気がする。ある種の理想系なんだろうな。
そしてそこからの脱却、思考の過程は清々しい。
豊富になった語彙で表現される突拍子もないような疑問や純粋な思考が面白い。
ベラの娼館への至る道は、現代でも近しい境遇と思考の女性もいるだろうな。
エマの大きな瞳は純朴にも理知の煌めきにも見える。まさに適任

描き方として好きなのが、その率直さ。
死から始まり、生,性→死といったりきたりしてるけど、そこに示唆や含蓄はない。
背景は奇天烈だけどそこにあるのは生と死ありのままで、そこがいい。
"poor things"なんて原題だけど、眼差しは感情的というよりまさに「実験的」に思考、感情、本能を俯瞰して描いている。
第三者視点の変なエゴがない分見やすい。

ラストも実に歪で「良識的な社会」ではないけど、そこには情があり、不思議ととても爽やかな読後感だ。
(そして社会的なクソ野郎はえてして不幸な目にあってるけど、ダンカンは軽薄で嫌な奴だけどあまりに哀れすぎて憎めない。笑go home で吹き出した)

見終わった後、村田沙耶香さんの小説が思い浮かんだ。違った社会通念の中で自己を確立していく女性がよく登場する印象で、なべて好きだったりする。
本当に個人的にタイプなんだろうなぁ、こういう話。笑
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