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天使の涙 4Kレストア版のRのレビュー・感想・評価

天使の涙 4Kレストア版(1995年製作の映画)
3.8
主観で、この映画を表現する形容詞3つ。
退廃的、官能的、幻想的。

観る順番は間違えてしまった。
“恋する惑星”を先に観ておけば、ちょっとした気づきや繋がりを楽しめたかもしれない。

■一種の芸術品といわんばかりの画
おそらく、ウォン映画ならではの、この90s中華をふんだんに活かしたの画の収め方について言及しないレビュアーはいないだろう。
フィッシュアイレンズ、ブラー、若干のビネットが効いて、ずっと白昼夢、ノスタルジーすら感じさせるスクリーン。極めつけに、雨の中で輝くネオン。これ以上素敵な景色があってはならないくらいに、大切にしていたい映像だらけだ。

■ 送り主はいても返送される愛ばかり
あらすじにはラブストーリーと書いてあったから、そこそこにロマンスは期待していたけど、ラブは少なめ(当社比)。「切ない」ラブストーリーと評するよりも、「行き場のない恋情が交錯する」ラブストーリーと書いておいてほしいね。
行きずりの恋情を必死に掴み取ろうとしたり、1人で慰めたり、案外けろっと忘れたり。友達よりも恋人選びがちだっていつか聞いたことがあるけど、結構人によりけりだなと思った。モウの切り替えの早さほしい。笑

■意思疎通ゼロ
よくよくよく考えてみたら、登場人物がまともに会話をしているシーンがほぼないに等しいことに気づいた。
繰り広げられる会話は“その言葉の交わし合いに名前をつけるなら、会話”というだけで、カレン⇆殺し屋⇆エージェントも、主張のぶつけ合いあるいは放棄をしていると言ったほうが正しいような気がする。金髪アレンに怒り心頭ちゃん⇆モウ⇆モウパパは、そもそもモウが言葉を発せない時点で、コミュニケーション自体が一方通行で行われる。
ストーリーとしてボリュームがもう少しあるとより楽しいと思ったのは、これが原因か。

正直なところ、ウォンがメガホンを取っていなかったら、面白さは減っていたかもしれない。映画監督でも“この人が撮らないと面白くない!”って思わせるの、すごいことだよね、だって自分はオーディエンスに直接的に作用する演者でもないんだから。
人間は代替が利くから今日も世界が回っているんだってカズレーザーが言ってたし、私も納得しているけれど。だけど“あなたじゃなきゃだめだ”って、そう言われる人になりたい。
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