TS

東京2020オリンピック SIDE:BのTSのレビュー・感想・評価

東京2020オリンピック SIDE:B(2022年製作の映画)
3.1
【開催しか選択肢はない】71点
ーーーーーーーーーーーーー
監督:河瀨直美
製作国:日本
ジャンル:ドキュメンタリー
収録時間:123分
ーーーーーーーーーーーーー
 2022年劇場鑑賞36本目。
 SIDE:Aを見たからにはBも見に行かなくてはという要らぬ使命感にかられて鑑賞。結論から言うと、個人的にはAよりBの方が断然良かったです。いや、決して良い作品とは言い難いですが、こちらの方がよりドキュメンタリー感がありマシだと思いました。相変わらず編集等はチグハグなので何とも言えないこともありますが、改めてこのオリンピックを開催する大変さを垣間見た気がします。世間的には、こんなコロナ禍の中オリンピックを実施するなんて正気の沙汰ではないと思っていました。しかし、世間と当事者達の熱の乖離というのはかなりあった様で、今作は恐ろしくも世間の意見がほぼ完全に遮断され、ただただ実施に向かっていくと言う流れを見守るという作品になります。なので、今作を見て当事者達の仕事ぶりを見直したという人も出てくるでしょうし、偏見だらけでけしからん作品だという人も出てくるでしょう。そういう意味ではA以上に評価がわかれる作品と思います。

 それにしても本当に虚しい現実。これだけ立て直して立て直して、あらゆる批判をかいくぐって開催したのに、残るものは少ない。批判するのは簡単でして、それを退けて実行するというのがどれほど難しいことか。私情ですが、僕自身もかつてコロナ禍の中修学旅行の主担当を担当し、行うのは倫理的にどうなの?てとこまできてましたが、子どもたちの思い出を潰したくないという思いで動いていました。無論、オリンピックの何万倍も小さいことなのですが、この気持ちはわからなくもない。批判する人は批判するだけなので楽だよなと思ったこともありました。オリンピックの関係者達もそんな気持ちだったのではないでしょうか。もちろん人命が第一なので、全てを評価することはできないでしょうが、アスリートのことを考えたりするとなかなかやめられない。と言っても実際はIOCの力や巨大な金が動くなどというドロドロの事情でやめられなかったのだと推測はしますが、何にせよこの仕事を中止にせずに実行することは本当に厳しいことだったと思います。

 女性差別発言で会長を退位した森会長も不憫で仕方ないです。たった一つの発言でこんなことになってしまう。今まで頑張ってきたものも水の泡になり、ただただ差別発言をしたおじさんというレッテルを貼られてしまうのです。ただ、これは決して女性差別発言を肯定するわけではありませんが、昨今の日本は不適切発言に敏感すぎると思います。なにかと揚げ足をとりバッシングをして、その対象者を追い詰めていく。この行為もはっきり言って過剰過ぎると許されるものではないと思います。そんなこともあり、国民の意思に反して開催された東京オリンピック。作中でも言われていましたが、このオリンピックは歴史の転換期にもなる、後世に語られるオリンピックとなるでしょう。そしてこのオリンピック開催の評価は歴史がしてくれる。今の我々がすると、大方批判の嵐でしょうが、もしかすると評価されるかもしれない。そんな時に今作がその資料としての力を発揮した時、はじめて今作は正当な評価がされることでしょう。個人的には関係者達の苦労が垣間見れたのでこの点数です。パリオリンピックでは、みんなが笑顔でオリンピックを拝めますように。。
TS

TS