たく

長ぐつをはいたネコと9つの命のたくのレビュー・感想・評価

3.8
命知らずのお尋ね者の猫が「一つだけ願いを叶える星」をめぐって繰り広げる冒険譚で、予告編であまり興味を引かれずスルーしたけど、観てみたら話が良くまとまってて面白かった。コマ落としを効果的に散りばめたアニメの質も高い。「猫に九生あり」のことわざの通り、9つある命のうち8つを使ってしまった猫という設定で、これは「ルイの9番目の人生」を思わせる。人生で一番大事なことは魔法に頼らなくても身近にあるってことに気付けるかどうかという教訓話にもなってた。アントニオ・バンデラスの声が渋くて役にハマってたのが印象的。すっかり忘れてたけど、「長ぐつをはいた猫」は「シュレック」のキャラなんだね。

数々の冒険譚で伝説となってる猫のプスには9つの命があり、今まで命知らずの行動のせいで8つの命を無駄に落としたことに気付く。その途端に生まれて初めて死の恐怖に囚われて、飼い猫として静かに暮らそうとするも、賞金稼ぎに命を狙われてさあどうするかという展開。プスが一つだけ願いを叶える星の存在を知り、今まで失った命を取り戻そうとするプスにライバルたちが絡んでくるのがワクワクする。プスと行動を共にする「わんこ」が本作のテーマを担う重要キャラで、誰もが自分のことだけ考えて星を追うのに対し、わんこには私欲がなく、常に相手のことを信じて寄り添う姿勢を見せる。

プスの婚約者だったキティがプスと同じく星を追うライバルでありながら、プスに対しまだ愛情を持ってることが態度に滲み出るのが良くて、彼女の叶えたい願いがこれまた泣ける。孤児のゴルディとクマのエピソードも胸に迫るものがあり、ヒール役のジャック・ホーナーにしても本作のキャラクターは全員「孤独」という要素が共通してたね。まあジャック・ホーナーはサイコパスだから孤独は感じてないかもしれないけど。プスを追う賞金稼ぎが実は死神で、西部劇を思わせる終盤のプスとの対決シーンの迫力が半端なかったし、その闘いの帰結も潔くて素晴らしかった。本作は続編が出てもおかしくないと思う。
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