Kachi

リバー、流れないでよのKachiのレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
4.2
貴船を舞台として良い意味での悪ふざけ作品。昨年行ったばかりの貴船にまた行きたくなってしまった。

前作の「ドロステのはてで僕ら」と同じく2分間で遊んでいる作品。前作は、複数の時間線を作って遊んでいたが、本作は時間軸をループさせる構造にするが意識はそのままという仕掛けを施して遊んでいる。

この仕掛け、映画好きなら見覚えがあるのではないだろうか?邦題で損をしている名作「恋はデジャブ」の2分版である。やはり死んでみる人が現れたり、人間関係の修復を図ってみたり、ループすることを逆手にとって悪さをしてみたり…

ループに巻き込まれている人が複数人(貴船のエリア一帯)であることや、ループのサイクルが短いことが異なるが、展開が近似しているところは興味深かった。

もっとも、「恋はデジャブ」ではループの外から出るトリガーが主人公の行動変容にあったが、こちらは時間警察を救うこととシンプルであった。良い意味で説教臭さがなく、あくまでもコメディ(というかコント)であるという線引きをしてくれている。

加えて、本作は含みもいくつかある。なぜ美女の時間警察があの時代の貴船を訪れたのか、それがぼかされている。単なる遊びではなく、作品のこの余白がクスッと笑えて、でも想像力が駆り立てられる作品へと一段格上げされているところが、前作からの脚本の違いであるように思われた。

私はあえて本作は映画館で観るべきだと思っている。それは、不特定多数の人たちで鑑賞し、共に笑うという体験ができる貴重な作品でもあるからだ。あるいは、ミニシアター的に家で複数人で観るのも良いかもしれない。お笑い番組を観るような感覚で、本作は堪能すべきなのだろう。
Kachi

Kachi