emily

ブロークン・イングリッシュのemilyのレビュー・感想・評価

3.3
ニューヨーク、アラサー独身女性のノラはホテルでVIP対応の仕事をしている。職場で俳優の男と知り合うもあっさり気持ちがないことが分かり、他の男ともなかなか縁に恵まれない。友達のオードリーも結婚はしているが、結婚生活に悩みを抱えていた。とあるパーティでフランス人のジュリアンと知り合い、その情熱に徐々に心惹かれていく。しかし彼はフランスへ帰国し、一緒に来ないかと誘われるも、仕事のことや今の生活を捨てて彼の元に行くことはできなかった。しかし失ってからその大切さに気付き、行動を起こす。

ふわっとした淡い色の映像と、ゆるっとしたノラの服装。30代の大人の女性の柔らかな大人の魅力を伝える演出と空気感がとても心地よい。どこか透明感があって、淡々とした中に乙女色が全編を通して輝いていて、どこか夢見心地である。

女子目線で作られており、主人公の揺れる心情や30代の複雑でどこか踏み切れない、年齢とのはざまに立たされてる大人の幸せを求める気持ちと、どこかそれをあきらめてる微妙な心情の描写が繊細に行われており、同世代の女性なら共感できる物があるだろう。逆に男の心情に関してはその表情からもあまり触れる事はない。情熱的にノラを求めるジュリアンではあるが、その表情はあまり変わらない。

その二人の距離の詰め方は、たった2日間でありつつ、完璧ではない英語をしゃべるジュリアンのブロークンイングリッシュと、それを埋めようと言葉を選び努力することにより二人の未完成の部分が埋まっていくように、がちっとはまる。

それでも二つ返事で彼についていくことはできない。もっと若い時だったら、後先考えずそれができただろう。ついていかなくても、ついていっても後悔があるかもしれない。失って初めて彼の存在に気が付くノラ。今まで卑下してばかりだった彼女が初めて自ら行動に出る瞬間。
その行動だけで、ジュリアンと出会えて恋できて良かった。
その出会いは無駄では
なかったのだ。
初めて自分を見つめ、自分の気持ちをしり、ここで始めて土俵に上がれる訳です。

誰かを好きになるには、まず自分を好きになり見つめる事が大事。それができたなら、その恋が実るか実らないか以上に得る物は大きいと思います。

運命の相手とは、絶対にどこかで巡り合えるなんて言いますが、それがあっけなくかなってしまう物語。それでも劇的によろこぶ訳ではなくあくまで大人の対応である。それでも二人らしい未来があるような余韻を残し、じわっと心があったかくなる物語である。
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