てっぺい

ゴールデンカムイのてっぺいのレビュー・感想・評価

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
4.0
【ゴールド映画】
原作の要素を巧みにまとめた脚本力。原作の迫力を見事に実現した映像力。漫画やアニメでは伝わらない実写ならではの映像表現も含めて、実写化のゴールド級の成功例。

◆トリビア
○山崎賢人は次のように語る。「今まで成長していく役が多かったのですが、杉元という役では、乗り越えた後の失ってしまったものや忘れてしまった感覚を取り戻していく男を表現できればと考えていました。自分も年を重ねて、今まで見せたことのないものをたくさん出す事が出来たのではないかと思います。」(https://kamuy-movie.com/comment/index.html)
○ 「俺は不死身の杉元だ」のセリフは、恐怖を感じている自然のヒグマに言うときと、自分のほうが強いと見下している二階堂たちに言うときでは、込めている気持ちも、そこから出てくる言い方も違う。そんな演じ分けにも気をつけたという。(https://www.mensnonno.jp/lifestyle/culture/420673/area03/)
○山﨑は役作りのため、体重を10キロ増量し、自ら雪上での過酷なアクションにも挑戦。馬に引きずられるシーンも山崎本人で撮ったという。(https://s.cinemacafe.net/article/2023/12/20/89219.html)
○ 杉元が身に付けている背嚢やベルト、弾薬盒、ブーツなどは、その時代の縫い方とパーツで一から制作、オーダーメイドしたもの。装身具一つ一つにもスタッフ陣の強い想いが込められているという。(https://www.oricon.co.jp/news/2295122/)
○山田杏奈は次のように語る。「年齢や身長など原作と異なる部分に不安も感じましたが、自分に任せていただいたことに責任を持って演じようと覚悟しました。現場で演じるほどにアシㇼパの意思を持って進む姿、想いの強さに共感し彼女がより好きになりました。」(https://kamuy-movie.com/comment/index.html)
○ 山田は、役柄のトレードマークである“変顔”について「原作と見比べながら(滞在中の)ホテルで練習した。白目をむくと、鏡が見えないので、スマホのカメラで撮影して。スマホの中に変顔がいっぱい残っている」と舞台裏を告白した。(https://anime.eiga.com/news/120371/)
○白石を演じた矢本悠馬は、特につらかったのは雪山で川に入るというコミカルなシーンだったという。気温-10度の真冬の北海道で行われた同シーンの撮影は、川の氷を砕いてその中に入ったそうで「寒いというか痛かったです」。(https://natalie.mu/comic/news/554014)
○鶴見を演じた玉木は、何をしでかすかわからない恐ろしさを表現するのが難しかったと語る。山崎賢人は、串を見ると鶴見に刺されるシーンを思い出してしまうという。(https://natalie.mu/comic/news/554014)
○監督は土方役の舘について、原作では手を伸ばしていた銃の撃ち方を『すぐに撃つなら構えるひまはない』と脇に構えて撃つと教わったという。その辺りも見どころだと話す。(https://hitocinema.mainichi.jp/article/temb0kdo69t)
○二階堂浩平・洋平を演じた栁俊太郎は、原作が伝説の漫画と語るほど大好きな作品。二階堂をフィギュアにしたいほどかわいげも感じるという笑。原作のとあるシーンで、浩平が「ヤダヤダヤダ」と叫ぶのを、本作の杉元と戦うシーンで自分なりに入れてみたそう。(https://www.mensnonno.jp/lifestyle/culture/420673/area03/)
○ 冒頭の通称二〇三高地を巡る旅順攻囲戦の戦闘シーンは監督曰く「どれだけ人が死んでいくんだという杉元や鶴見のトラウマになった壮絶な戦争を描かないと物語の推進力が生まれない」と軍事訓練を積み、実際に約200メートルの坂を作って、当初4日だった撮影を10日に延ばして撮影された。(https://hitocinema.mainichi.jp/article/temb0kdo69t)
○ 原作漫画は「マンガ大賞2016」や「第22回手塚治虫文化賞『マンガ大賞』」に選出。また連載の完結を受けて、作者の野田氏が第73回芸術選奨文部科学大臣新人賞メディア芸術部門を受賞した。(https://kamuy-movie.com/intro/index.html)
○「水晶玉子のゴールデンカムイ占い」では、生年月日で自分が原作のどのキャラタイプか無料で占える。(https://www.mensnonno.jp/fortune/goldenkamuy/area02/)

◆概要
【原作】
野田サトル「ゴールデンカムイ」(2014年8月〜2022年4月「週刊ヤングジャンプ」連載、累計発行部数2700万部超(2024年1月時点))
【監督】
「HiGH&LOW」シリーズ 久保茂昭
【出演】
山崎賢人、山田杏奈、眞栄田郷敦、矢本悠馬、工藤阿須加、柳俊太郎、大谷亮平、勝矢、木場勝己、大方斐紗子、マキタスポーツ、秋辺デボ、玉木宏、舘ひろし、高畑充希、泉澤祐希、島津健太郎、井浦新
【主題歌】
ACIDMAN「輝けるもの」
【公開】2024年1月19日
【上映時間】128分

◆ストーリー
日露戦争での鬼神のごとき戦いぶりから「不死身の杉元」の異名を持つ杉元佐一。ある目的のため一獲千金を狙う彼は、北海道の山奥で砂金採りに明け暮れていた。そんなある日、杉元はアイヌ民族から強奪された莫大な金塊の存在を知る。金塊を奪った「のっぺら坊」と呼ばれる男は、捕まる直前に金塊を隠し、その在処を暗号にした刺青を24人の囚人の身体に彫って彼らを脱獄させた。金塊を見つけ出すべく動き始めた杉元は、野生のヒグマに襲われたところをアイヌの少女アシリパに救われる。彼女は金塊を奪った男に父親を殺されており、その仇を討つため杉元と行動をともにすることに。一方、大日本帝国陸軍第七師団の鶴見篤四郎中尉と、戊辰戦争で戦死したとされていた新選組副長・土方歳三も、それぞれ金塊の行方を追っていた。


◆以下ネタバレ


◆脚本
冒頭に記されたアイヌ語、“天から役目なしに降ろされた物はひとつもない”。原作でも幾度となく登場し、命と自然を敬うアイヌ文化の理念を伝えるこの言葉が、映画冒頭に記される事で分かる本作のテーマ。なるほど戦争で杉元が幾人も殺める冒頭から対照的に、その後の本編では通してアシリパがそれを止めに入り続ける。ヒグマを解体する場面も、アシリパがこれを唱えながら、ゆったりと重みのあるシーンになっていた。自然の恵みに感謝する意味の“ヒンナ”、映画のラストカットが杉元の“ヒンナだな”だったのも、そんなテーマを重ねて印象付ける。原作に散りばめられた、アイヌの理念を一つの作品内に見事にまとめた素晴らしい脚本だった。もっと言えば、杉元とアシリパが結束を誓うラストに、杉元の梅子と寅次への想いをまとめたのも見事。原作以上に2人の絆が固く結ばれる素晴らしいラストになっており、3巻分がよくまとまっていたと思う。

◆迫力
4日の予定を10日にのばして撮影したという二〇三高地の攻囲戦。真正面から向かう日本兵が次々と撃たれる様は、想像以上に描写がリアルでど迫力。そんな中、首を撃たれた杉元が踏みとどまるシーンがまさに“不死身の杉元”を強調。鬼の形相で敵を蹴散らす姿も含め、冒頭から度肝を抜かれた。ヒグマのCGもしっかりリアルで、その咆哮もど迫力。実際に本人が挑んだという馬に引きずられるシーンも見応えあり。荷馬車でのアクションも視点がクルクル回り、なるほど「HiGH&LOW」シリーズを撮ってきた久保監督ならではのど迫力。通して見飽きることが皆無な作品だった。

◆実写
発表当時から再現度が話題を呼んだ鶴見中尉のビジュアル。脳汁がドロリとしたたるあの不気味さは原作、アニメをゆうに超えてダントツ。杉元に串を刺すシーンも含めて、実写だからこそ強調される作品の魅力がいくつも。俯瞰の雪山の絶景もあれば(撮影するために雪を踏み固めるのが撮影陣の1番の苦労だったそう)、白石の格子を抜ける描写も実写でこそ伝わるもの。二階堂双子の目の座った不気味な動き方も◎。アシリパは背丈や歳こそ違えど、山田杏奈の透明感と変顔は魅力たっぷりで人気爆発必至。何より山崎賢人も「キングダム」とはしっかり演じ分けがされており(エンドロールの砂金の映像にはキングダム感しっかり笑)、10キロ増量したという筋肉も見事でした。実写の成功例を作り上げた製作陣に、ヒンナ!ラストに見た二瓶や辺見、家永にキロランケのビジュアルも含め、間違いない次作の匂いには、それこそ「キングダム」を超える成功の期待が高まる。

◆関連作品
○「ゴールデンカムイ」
原作漫画。「ebooksjapan」で第10巻まで無料配信中(2024/1/31まで)。本作の内容は第3巻までにあたると予想されている。
○「ゴールデンカムイ」
アニメ版。第1期〜第4期まで、プライムビデオその他で配信中。

◆評価(2024年1月19日時点)
Filmarks:★×4.1
Yahoo!検索:★×4.0
映画.com:★×4.2

引用元
https://eiga.com/movie/97036/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ゴールデンカムイ
てっぺい

てっぺい