榊ニル

ゴールデンカムイの榊ニルのネタバレレビュー・内容・結末

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

原作は全巻読破済、連載初期から追っていたファンです(古参アピ)。
ぶっちゃけ一切期待してなかったし、
何なら「オソマ映画だった」と言いたいが為に鑑賞しに行ったまであるが、思いの外面白かった。

まず第一印象であるビジュアルだが、これは素直に絶賛したい。どのキャラもコスプレ感は一切感じず、原作の造形を一切損う事なく実写に落とし込まれていた。

特に二階堂兄弟。細身であるとか、クネクネ体を捻ったトリッキーな戦闘スタイルなどは、映画独自の要素なものの、あの二階堂を描くためにはこれしか無い!と納得せざるを得ない改変だった。この気持ち悪さが最適解だ。

公開前にあれだけ叩かれていた(私もミスキャストだろとは思っていたけど)山崎賢人も、しっかり身体を仕上げていたので不満無し。
流石に原作程ガチムチでは無かったものの、
演技力でしっかりカバー出来ていたと思う。
本作では、杉元の冷酷な一面が原作以上に強調されており、彼が日露戦争で負った心のキズの深さを、台詞、表情の節々から感じる事ができた。原作ではストーリーが進むにつれて、頭のおかしいキャラがどんどん増えて狂気のインフレが起きていたので、相対的にマトモだと思っていたが、そういえば杉元も壊れてる人間だったなと我に帰らされましたわ。これは山崎賢人の演技力なくては成立しなかったとハッキリ言える。ナメててゴメンよザッケン。

次に脚本についてだが、これもまた原作に忠実で良し。安直に原作通り物語をなぞるだけではない。複数のエピソードを1つに纏めていたり、原作とは異なる時系列でストーリーが進行するといった改変もあったが、どれも一本の映画として成立させるために機能していた。特筆したいのはやはり杉元周りの物語。原作における杉元の過去描写は、本筋時系列の合間合間に少しずつ描かれていく構成だった。本作でも同様ではあるのだが、深堀りされるタイミングは中盤〜終盤と遅め。最も重要である杉元が金塊を求める理由に至っては、映画のクライマックスに持ってくるという大胆な構成に改変されていた。これにより、物語中盤までは杉元の心の内が分からず、恐ろしい兵士という印象が強く残る。しかし壮絶な過去が描かれるに連れて、彼の人情味溢れる優しい一面が垣間見え始めるという構成になるわけだ。おかげで原作とは違ったアプローチで、共感と愛着を呼ぶキャラクター像になっていたと感じる。

あとはアクションが素晴らしかった。
日露戦争の進軍、小樽での銃撃戦、第七師団兵舎からの脱出劇など、どれも原作以上に尺を割いて描いており見応えは抜群。
お気に入りは終盤の杉元VS二階堂。ソリを中心にグルグルと立ち代わるカメラアングル、前述した二階堂のキモい動きも相まって、興奮が収まらなかった。二階堂、馬からソリに飛び移るのは納得できるが、その後並走している馬に壁キックして杉元の攻撃避けるのは化け物すぎでは?「こんな戦闘原作にあったっけ?」と、本作鑑賞後改めてKindleで読み返したが、そもそもあの件で二階堂は一切出てないのな。
映画の山場で、しかも原作ではサクッと終わらせていた件に、二階堂を配置してアクションを膨らませる改変センスよ。これはサイボーグ二階堂(お箸搭載)と杉元の一騎打ちを実写で見れるってことですかい制作陣さんよぉ!?
是非最終決戦まで映像化してくれる事を期待したい。

アイヌのグルメ描写も、しっかり尺を割いて描いてくれたのも嬉しい。動物の狩猟方法や調理描写も丁寧で、グツグツと煮込まれたリス肉のオハウは原作以上に食欲を唆らされた。演者達の演技も見事で、カワウソの頭を食べさせる件だけでなく、オソマ鍋を食べようと必死なアシㇼパさんの顔芸までやってくれていたので満足。今後も鯱やアザラシ、カレーを食べる杉元一行の旅を見せて欲しいと切に願っています。
ただ続編を作っていくとなると、原作31巻全ての映像化は非現実的なので、是非グルメパートだけのドラマシリーズを制作してくれると有難い。
アシㇼパさんとオハウを囲みたいなぁ。チタタプ....チタタプ......。

とまぁ基本的に絶賛の姿勢だが、少し気になった点も挙げさせて欲しい。

一つは、BGMがいちいち壮大過ぎた気がする。
観客の情緒を揺らすために、物語の盛り上がりに釣り合っていない過度な演出がされているシーンが多々あったなと感じた。



杉元「金塊を見つけよう‥‥‥俺達で!」
デン゛デケデン゛デケ(クソデカドラム)




そんなに盛り上げなくても良くない?

これ実写に限らずアニメでも結構遭遇するんだけど、こっちがせっかく80くらいの熱量で楽しんでるシーンに、150の演出で味付けされると冷めちゃうのよな。次回作ではもう少し演出を控えめにしてくれると助かる。

もう一つは劇場で鑑賞してこそ感じたことだが、前半のギャグがそこそこスベっていた。具体的に挙げると、アシㇼパさんが味噌をオソマと勘違いする件、杉元白石が川ポチャして暖を取るまでの件かな。原作を元から知っているのと、オーバーな役者の演技で、笑っていい描写である事は伝わるのだが、シリアスパートからヌルっとギャグに入るせいで笑いづらい空気になっていた気がする。後半のギャグは劇場の空気が緩んでいたからか、徐々に笑いが増えていたので、シリアスパートとギャグパートの演出がハッキリ分かれていたらなお良かったかも。

以上、少し引っかかる部分はあったものの、原作ファン、完全初見問わずオススメできる名作でした。是非劇場へ。

この映画で金カム熱が再燃してKindle買ってしまったよ。全巻。実家に紙の単行本揃ってるのに。あなたへの特別オファー(商品ページ飛んでから10分以内に買えば、貰えるポイント増えるやつ)にやられたね。対象が31巻全部とかふざけてんのか。いつも5巻毎にしか出してこないくせに足元見すぎだろ。来月から節約しなきゃ‥‥‥‥。
榊ニル

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