諸星だりあ

劇場版 美少女戦士セーラームーンCosmos 後編の諸星だりあのレビュー・感想・評価

5.0
前編に続き、初日鑑賞。

未だ感情がグルグル回っていて整理がついていないが、やや抽象的で把握が難しかった原作をしっかり映像化し、そこに竹内直子先生、スタッフ、キャスト陣の想いが詰め込まれたあまりにも壮大な完結編だった。

前編は基本的に日常描写の中にあったので女子高生の物語として見られたが、今作はずっと地球外での戦い。写実的な場面とは無縁の、夢の中のようなシーンのみ。そしてその夢は間違いなく「悪夢」である。前編で絶望の海に叩き落とされ、そこから奮起したうさぎだが絶望はまだ続く。いくら敵が強大とはいえ、ここまでやっていいものか、と気分が悪くなるほど前半は地獄の続きだった。スターライツと火球は、何も特別な存在ではなかった。

この状況を、主人公の力で打開して終わるのか、と思ったがそれとも違った。

SF映画の代名詞スターウォーズは、常に世界は調和で動いていると伝えている。勧善懲悪ではなく、時代によって傾き、偏りが正されていく所に争いが生まれるという歴史を綴っているのだ。
大袈裟でなく、これと同じ事をセーラームーンも語っている。

「闇が光を呼び、光もまた闇を呼ぶ」

うさぎ達が戦ってきたこれまでの敵も、うさぎの力を求めてのもの。その敵に壊されたものを取り戻してきたのもまた、うさぎの力。敵味方関係なく、引きつけ合うのがこの世に生きるものの定めであると伝える作品だった。凡百の娯楽作品で見せている「正義」や「戦い」の概念を恐ろしくリアルに描いていて、哲学的だと感じながら観ていた。ギャラクシアと対峙してからは、心底没入していたと思う。

だからこそラストは涙が出た。
驚くような転換点があった訳でもないのに、悪夢が美しい夢に変わっていたからだ。
世の中のどんなことも表裏一体だと思い知らされて、あぁ、何も変わらないけど、これこそが人の世なんだなという寂しさや虚しさ、それ以上の安堵感と温かさがあった。

素直に言えば、キャラが可愛くて、それだけで観ていたような作品である。物語はどうでも良くて、それが旧アニメ版の作り方にも合致する部分であった。今作もまた物語はひどく単純、理想主義の優しい少女が敵と戦うだけ。でも、シンプルであるがゆえに
「苦しい世界でも、好きな人と一緒なら生きていける」
という捻りの無いメッセージが豪速球で投げ込まれる、そういう作品だった。
それを知れて、胸の奥の星が暖かくなったのが嬉しかった。

完結、おめでとうございます。
魅力的な美少女戦士達をありがとうございました。

野暮な話で締めるが、バトル物として見たらこんな最強の作品、他にあるだろうか(笑)。
諸星だりあ

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