ゆきえ

とおいらいめいのゆきえのレビュー・感想・評価

とおいらいめい(2022年製作の映画)
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凄い…研ぎ澄まされている…
特殊効果がなくても
全体に流れる静けさが家族の物語としても
SF映画としても没入させてくれる。

-世界の終末版 海街diary-
海街diaryと同く親の死をきっかけに同居することを決意した腹違いの姉妹。
似た設定だけれど人物が違えば味の違うドラマが生まれるの面白い。

姉達の方に妹を呼ぶのではなく
姉達の方が出戻ってくるって言うのは
複雑さが増しますね…。
あと、女子のグループにおいて3人ってのが1番難しい気がする。
前半、三女の音ちゃんの居た堪れなさが切なかった。どんなに優しい態度で接せられても
仲の良い2人のやり取り見てると感じてしまう疎外感。
なので後半の鏡を見つめる音ちゃんが愛おしくて仕方なかった。
八百屋さんの存在も救いだった。

八百屋さんと言えば、
ご飯を誰が作るかって会話も良かったな。
自然な流れでああなったようだけど
楽なようでいて持続するには1番気を遣うパターンに感じた。
食事シーンが印象的だったからこそ、この会話が活きていて好きでした。

この家族問題だけでも見応えたっぷりなのにそれに加えて“世界の終わり”と言うシチュエーション。
シェルターの個室を設計する長女のお仕事の描写はまるで違う映画を見ているようでハッとさせられる。
かと思ったら次女は過去の恋愛に囚われてたりもして、世界が終わるって状況で恋愛がスッキリしてないのが1番嫌かもしれないなと頭を抱えました笑

長女と次女の幼い頃のシーンが何度も挟まることで、世紀末と現在が重なっていくのも面白かった。

終盤の音ちゃんが走るシーンは
高石あかりさんの演技もカメラワークも
素晴らしくて息が苦しくなった。
こう言う繊細な演技を捉える画作りが素晴らしくて、この作品の最大の魅力かなと思いました!

なんと言ってもラストシーン…こんなの観たことない。美しすぎた…。
溢れる言葉たちにも癒された。
終わりを迎えるからこそ聞こえてくる尊い音。
自分だったら何を呟くだろうか。

チネマットのオンライン試写会で拝見させて頂きましたが、
観終わった瞬間に「これは劇場で観たい…!」
と興奮させてくれる作品でした。

大画面で観たい静かなドラマって素敵だ。
ゆきえ

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