ゆきまる

ナワリヌイのゆきまるのレビュー・感想・評価

ナワリヌイ(2022年製作の映画)
4.4
奇しくも、ナワリヌイ氏の葬儀の日に鑑賞。
映画冒頭のメッセージに、遣る瀬無さが募る。

嫌だろうけど考えてくれ
もし殺されるとしたら、どんなメッセージを残したい?

僕の追悼映画みたいだ
それは、2本目の映画に取っておこう
この映画は面白くする

ロシア反体制派のリーダーであり、先日獄中死したアレクセイ・ナワリヌイのドキュメンタリー。世界で起こっている不正義が、日本でぼんやりニュースを見ているだけでは分からない解像度の高さで説明され、いろいろと考えさせられた。

2020年に起こった自身の暗殺未遂の真相に、調査報道機関ベリングキャットのブルガリア人調査員の力を借りながら迫る。
この一連のプロセスを記録、報道し、全世界にロシア政権の闇を暴くという、ジャーナリズムの真骨頂ともいえる大胆不敵さに、心を掴まれた。
自国のメディアが使えなければ、海外のメディアやSNSを駆使して活動するナワリヌイは、すごくスマートで現代っぽい。

自らの危険も顧みずに、ロシアに戻ったナワリヌイの決断や、彼の活動をサポートするユリア夫人や娘の胆力は常人には考えられないものだが、命を賭してでも国を変えたいという、不退転の覚悟を民衆に示したかったのだろう。

ドキュメンタリーを通じて、ナワリヌイの身の危険に全く動じず、冗談を言ってよく笑う、余裕すら漂わせる風格に驚いた。プーチンの冷徹非情さにも身が凍るが、それに対抗する人間のいかに強いことか。彼の意志は口をふさがれても自由を求め、叫ぶ人たちの中に生き続けるだろう。

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それにしてもロシアってほんとに恐ろしい。
途中で映った集合住宅みたいなのが、エクセルで作ったグラデーションの棒グラフみたいで、世紀末感満載。
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