ゆきまる

哀れなるものたちのゆきまるのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.2
奇天烈で強烈な作品。
















フェミニズムを語る壮大な作品であり、奇想天外なテーマ設定と摩訶不思議な世界観に飲み込まれた。過激な性的描写が話題だが、セックスとジェンダー/人間/モラル/ 社会など、セックスをとりまく様々な議題に真っ向から迫るため、大量の性的シーンにも説得力がある。

自殺した妊婦が、自身の胎児の脳を移植され、生き返るという設定だが、物語の後半でベラ(ヴィクトリア)の半生や自殺の背景が明らかにされるにつれ、これは母の体を借りた子が「女の人生」にリベンジをする話だと思った。母ヴィクトリアの、家父長制的な旦那に抑圧された半生が身体記憶となってベラの性的な奔放さとして発現したとも読めるし、セックスを通じて、社会的規範やモラルに挑戦するベラは、女性の自由や自立の象徴である。自分の行く手を遮る男性陣を一刀両断して、我が道を行く姿が清々しい。

特に、
①マックスに「私は外の世界でアドベンチャーをしてからあなたと結婚する」と高らかに宣言するシーンと、
②船上の舞踏会で、ダンカンの手を振り払って一人で我流ダンスを踊ったシーンが最高だった。

ただ、近年のフェミニズム作品は、女性の力を誇示して男性に勝利するプロットが多く、今作品も例外ではないが、やや食傷気味。

音楽、衣装、カメラワーク、映像、どれをとっても一流のアート作品で、感性への訴求力が高い。加えてエマストーンの演技力は圧倒的で、成長過程の各ステージの細かい演じ分けの巧さはもとより、役柄への溢れるパッションに目をみはらされた。オスカーは彼女で決まりでしょう。ララランドでライアンゴズリングと軽快なタップダンスを踊っていた彼女が、今作では男の手を振りほどいてエキセントリックなダンスを披露していて、なんだかしみじみ感じ入るものがあった。
ゆきまる

ゆきまる