ゆきまる

かもめ食堂のゆきまるのレビュー・感想・評価

かもめ食堂(2005年製作の映画)
4.1
好きな映画。テーマは「寂しさ」

主演女優、片桐はいりの著書「私のマトカ」に惹かれてこの作品を鑑賞&フィンランド旅行をした。
このエッセイは、主にフィンランドでのかもめ食堂の撮影中の出来事をつづっているのだが、その中に
「タンペレ(フィンランドの都市)は寂しさを煮詰めたような場所」という一文があり、これがフィンランドという国の雰囲気を見事に言い得ている。フィンランドの美しく、静かな佇まいがストーリーの趣旨と映像にうまく取り入れられていて、観ていて深い感動があった。

かもめ食堂の登場人物は、どこかみんな寂しげ。寄る辺なさと諦観のもと淡々と生きる彼らが、かもめ食堂を通じて、ゆるやかにつながっていくという話。淡々とした会話劇と、無駄な演出の無さが登場人物のキャラクターを引き立て、リアリティを形成しつつ、ファンタジー要素も絶妙なバランスで配合しているのが巧い。

marimekkoにArabia にittalaー登場人物たちのファッションや、食器などのインテリア雑貨にも、自然と目を奪われ、見ていて楽しい。

エンディングに、井上陽水のcrazy love をもってきたところも最後にして大胆なチョイスでありながら、不思議と作品にマッチしていて、あまりのセンスの高さに唸らされてしまった。シンプルで完成度の高い作品。
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