今泉監督の作品は、普通だと『価値観の違いだ』とパシッと切り捨てられるところをしっかり拾って深掘りしてくれるところがおもしろい。
それに加えて、浮気されたら腹立つ、悲しいとか、普通だったらこういうときこうだよねってことの逆説を突いて話を広げていくところもぐいぐい引き込まれてしまう。
今回の話の軸でもある『手放す』ということ。
才能があったり、あらゆることがすぐ手に入る環境にいながら手放す行動が理解できない という話が出てくる。
手放すことでいえば、自分自身にも理解できない自分の心の動きがあって、
自分に好意があるなと感じると、その人を避けたり距離をとってしまう行動をしてしまうことがある。
手に入りそう、というと言葉が悪いけど、心が繋がれそうと気づいたら逃げてしまう。
それはしあわせを手にすることが怖いと感じるのと、そのしあわせを手にしたときの自分が想像できない。
本当は手放したくないのだけど、手放す方を選んでしまう。そんな自分の人にはわかってもらえへんところも重ねてしまった。
茂巳は、手放すことが理解できないと言っていたけど、小説を書く才能を手放していたり、生まれてはじめてやったパチンコで大当たりしたのを隣の席の人に譲ったり
本人が意識していないところで、手放す行為をしている。周りの人にとっては羨ましいと思うものを簡単に手放していく。
何かを手に入れるために手放すと言われることもあるし『手放す』とか『離れる』が悪いことばかりじゃないように思う。
物語の中に散りばめられている『手放す』という行為がいい意味でも悪い意味でもあらゆる捉え方で描かれてて、
それに対する心情が台詞とともに浮き上がってくるところが考えさせられるのだけど、
かといってその感じわかる！わかる！とは決してならない。
自分と違いすぎるからおもしろいんやろな。
やから今泉監督作品だいすきなんやろなあ。
帰り道、お気に入りの喫茶店に入って映画のことぼんやり考えた時間も含めていい時間でした。
