さよこ

GOのさよこのレビュー・感想・評価

GO(2001年製作の映画)
4.9
【こんな名作を見逃してたとは…!!!】
窪塚洋介のこと好きなのに、そういえば出演作品を観れてないなと思って鑑賞。

⛹️全体の感想
日本で生まれ育っても彼らの日常には"日本人とは違うこと"がたくさんあって、彼らの価値観や葛藤や生きづらさが痛いほど伝わってきた。スクリーンで観れて良かった。ありがとう、目黒シネマ。

⛹️脚本
お洒落な台詞がたくさんあって楽しかった。説明調でもなく、直接的な物言いでもなく、特に恋愛描写が好き。2人が出会ったときの「ねぇ今のも(心を)読み取った?」の台詞が最高。お洒落すぎる。

⛹️時代背景
公開は2001年らしいけどみんなスマホを持ってないし(この時代はPHSとかポケベルなのかな)、自宅の黒電話でやり取りしてるので昭和中期〜後期の時代設定に見えた。けど窪塚くんの髪型やガールフレンドのファッションは平成初期くらいのようにも見えるし、マライヤ・キャリーの音楽も聴いてるみたいだから90年代が舞台なのかな。昭和ほど昔過ぎず、少しだけレトロな感じがとても良かった。20年後、30年後には「懐かしの現金払い…!」とか「電子タバコじゃない…!」とか言うようになるのかな。映画はその時代を映し出していてとても面白い。

⛹️フィルム
今回の上映では最初に「フィルムの劣化により一部映像に乱れがたります」のアナウンスが入って、実際の映像はたしかに粗い感じはしたけど、これはこれで味があって良かった。それにしても窪塚洋介の鎖骨から肩にかけてのラインが芸術すぎる。指も長くてきれいだし、横を向いたときのフェイスラインはもはやアート。フィルム版も良かったけど、いつか4kリマスター版もやってほしいな。

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⚠️この先、ネタバレあります⚠️
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⛹️ビーバップ感
まさかの山本太郎出演でびっくりした。俳優さんやってるの初めて知った。上裸で海パン履いてる運動神経の良いタレントさんのイメージだった。オープニングの電車のシーンは危なすぎて見てられなかったし、これは地上波で流せないだろうなって思った。モラルのない人たちがこの映画を真似してYouTubeやTikTokに上げそうな気がする。てっきり山本太郎はOB役かと思ったら、中学?高校?の制服着てるし学生役でさらにビビッた。中学生でも普通に🚬してるし、警察も注意しないし、色々とすごい時代(もしくは治安の悪いエリア)だなぁ…。山本太郎のオラつきっぷりとか、威勢だけよくて全然兄貴分の器じゃないところとか(後輩置いて逃げてるし)とても板についていた。ナチュラルにあれだけ嫌な先輩の雰囲気だせるの凄い。こうやって年下にしか威張れない人たちが、大人になって権力に屈して、そんな自分が惨めに思えて、おじさんになってから全盛期の武勇伝を語りたがる人になるんだろうなぁ…などと思った。自分の今に納得していない人ほど過去の自分を語って、理想と現実のギャップを埋めようとする。

⛹️教育的指導という名の暴力
子供の奥歯が吹っ飛ぶほど容赦なく殴りまくる父親ヤバいな児相案件じゃない?と思ったけど、お互いボクシングをやってる同士ではあるので、これは父親と息子のコミュニケーションの一つなんだなと公園のシーンでようやく理解した。ただ民族学校の教師が生徒の進路に憤慨して殴って自分の思い通りの進路へ変更を迫ったのはもはや支配や洗脳だろうと思い、この映画で在日韓国人への好感度が上がったかというと、むしろ自分にはマイナスプロモーションになった。今は違うかもしれないけど、家庭でも学校でも子どもを保護するべき立場の人からの暴力で溢れていて、それは子どもたちにも連鎖し、全体的に暴力が生活の身近なところにあるように思え、それは日本人からみて「怖い人たち」と思われても仕方ないんじゃないかと思った。いわば自衛に近い。

⛹️公園のシーン
父親の「公園に寄ってください。3分で済みますので」が格好良くて痺れた。絶対に超えられない壁として君臨する父親という存在。かっこいい。この公園のシーンでもパシャパシャと写真を撮る道具がスマホじゃなくてインスタントカメラ?を使ってて、レトロな感じがとても良かった。新聞記者さんたちが使ってるようやストロボタイプのカメラもあった気がする。

⛹️ガールフレンド
窪塚くんの穏やかな声と柴咲コウのキンキンした話し方がアンマッチで最後まで好きになれないキャラクターだった。「血が汚い」なんて本人に向かって言える無神経さがすごい。本人に伝えた時点で、自分の言葉じゃないっていう免罪符は通用しない。柴咲コウの演じ方次第では、もう少し悪気のない、イノセントなキャラクターに出来たんじゃないかと思った。

⛹️エロい伏線
初めて彼女の家に遊びに来たときのあのシーンが比喩的な撮り方で却ってエロさが増してて心のなかできゃーーー!てなった。あの脚の絡め方はもうそれってコトだよね!!!?てなったあとの"語り"を聞いて、そこまでしてなぜ最後まで…!!!?てなった。けどそれが大事な伏線で、こんなエロい伏線あってたまるかよって中学生男子みたいな気持ちになりながら観てた。

⛹️父親の職業
そういえば日本にあるパチンコ店のオーナーのほとんどは、韓国(&朝鮮)出身と聞いたことがあって、主人公の父親が換金所で働いてるのも納得だった。

⛹️新井浩文
エンドロールに新井浩文の名前があってびっくりした。どの役だろう。日本語喋って怒られる役かな…?地上波で流れない理由の1つかもしれない。もしかしたら目黒シネマさんも上映するか迷ったかもしれないけど、こうしてスクリーンで観れて嬉しい。

⛹️その他
・頑なに日本語でニュアンスで伝えたい男子生徒が可愛かった。自分の気持ちに合った言葉を選ぶのって難しいよね。
・ジョンイルは幸せになって欲しかった。女の子守ろうとするなんてめちゃ良いヤツじゃん。なんで女の子にアプローチするのにナイフがいるんだよ…クズすぎる。
・親友が亡くなって落ち込んでる人の横で呑気にベッドの上で飛び跳ねる女ヤバすぎない…?
・お母さんのチェスの速さよ。
・在日って言われるといつか日本から出ていく人たちって意味に聞こえるんだよ、て台詞は頭殴られるくらいの衝撃が走った。在日って言葉なるべく使わないようにしよ…
・行定勲×宮藤官九郎が豪華すぎる
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