むさじー

野いちごのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

野いちご(1957年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

<孤独な老人の自己洞察を描く、若者に観て欲しい老人映画>

イサク(ヴィクトル・シェストレム)の旅は他者を通して自分自身を見つめ直す旅。
彼の求めた人生というのは、人間の愚かさを拒否し、人との関わりを避け、理性や研究に生き、その結果、高い業績と評価を得た。
しかし振り返ると、過去の記憶による苦痛や後悔が悪夢や幻想となって今のイサクを苦しめている。
旅における人との出会いはそんなイサクを変えた。
今まであまりにも他人に無関心だったことに気付く。
名声を勝ち得た人生だったが、老境に達して初めて、他者の姿に己が姿を映し見て、人の繋がりやその温かさ、平凡な家庭の幸せに気付かされ、そして安寧の境地にたどり着いたといえる。
こんな格調高い老人は稀だが、孤独なままではきっと他人の感動に関心は向かなかっただろうし、それを理解することなどとても……。
そんな内向的な老年心理を描いた映画である。
若い人には退屈かなとやや心配だが、ぜひ観て欲しい映画である。
むさじー

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