エイデン

金の国 水の国のエイデンのレビュー・感想・評価

金の国 水の国(2023年製作の映画)
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商業国家として栄える“アルミハド”と、豊かな水源を持つ自然国“バイカリ”
隣接する二国は昔から仲が悪く、いがみあいを続けており、とうとう些細なことから戦争を始めてしまう
途中 和平を望んだ王達により約束が交わされるも、すぐにまた戦争が行われるようになり、やがて二国の間には高い壁が建設されるのだった
そして現在
二国の対立は続いていたものの、戦争自体は収束し、二国はかつて結んだ約束を果たそうと動き出していた
その約束とは、アルミハドからは国1番の美女を、バイカリからは1番頭のいい若者を互いの国に送り婚姻させるというもの
しかしアルハミドの王ラスタバン三世も、バイカリの族長オドゥニも、和平のために約束を果たす気など毛頭なかった
そして約束の日、アルハミドの第93王妃の娘サーラ姫の元には子犬が、バイカリの貧しい村に住む建築士ナランバヤルの元には子猫が互いの国の婚約者として送られて来る
これが公になれば戦争が始まると考えたサーラは、この事実を胸に秘めることとし子犬をルクマンと名付け可愛がるのだった
そんなある日、サーラの元に姉である第一王女レオポルディーネがやって来る
レオポルディーネはバイカリで1番頭のいいという婿に会い、壊れた時計を直して欲しいと言うのだ
その場は何とか切り抜けたサーラだったが、このままではいずれ事実が露呈すると考え困ってしまうのだった
そんな折、バイカリとの国境を隔てる壁で景色を見ながら昼食を食べていたサーラだったが、突然 ルクマンの行方を見失ってしまう
だが鳴き声が聞こえてきたのは、何と壁の向こう側だった
ルクマンが壊れた壁にできた穴からバイカリ側に行ってしまったことを悟ったサーラは、意を決して自分も穴をくぐり抜ける
そこでサーラは深い縦穴に落ちてしまったルクマンを発見
どうすることもできずサーラが困っていると、そこへ偶然 オドンチメグと名付けた子猫を連れたナランバヤルが現れる
ナランバヤルはサーラがアルハミドからやって来たことに気が付きつつも、ルクマンを助け出すのだった
ナランバヤルに感謝するサーラは、レオポルディーネとの一件を思い出し、優しく気立の良い彼に婿役を演じてほしいと頼み込む
不況で仕事も無いナランバヤルは事情を知って快くそれを承諾し、穴を通ってアルハミドへと向かう
そして後日、ナランバヤルはサーラと夫婦を演じながらアルハミドの都市部を訪れるが、そこでアルハミドが密かに水不足で苦しんでいること、それを理由にバイカリへの侵攻を目論む一派がいることを知る
二国の平和のため、ナランバヤルはある計画を立て始めるが・・・



岩本ナオ原作の同名漫画を映像化したアニメ映画

対立を続ける国同士の2人が偽装夫婦となり平和を目指す
悪く言えばありがちなほど古典的な寓話劇
それに現代風なアップデートを加えつつ、飽和レベルの優しさを加えた逸品に仕上がってる

主人公2人の思いやりに溢れた気持ちが2人の絆を深め、やがて二国の架け橋となっていく
その行動のほとんどが優しさ由来という高純度な良い話
思いやりの詰まった2人のセリフはなかなか刺さる人も多いのでは
また日本映画では珍しく、ヒロインのサーラがぽっちゃりとした決して国1番の美女ではないというルッキズムの問題に踏み込んでいるのも良かったし、ただその要素を加えただけでなくストーリーやテーマとの絡め方も上手い

そしてゆるふわした雰囲気の絵面ながら、アルハミドを舞台にした陰謀劇、政治劇までしっかり描かれていて、二国の平和のために奮闘するナランバヤルや人々の戦いは思いの外熱くてビックリした

人も国家も平和のため共存のためには、違いを理解し認め合う必要があるという単純ながら核心を突いたテーマ性
正直やや子ども層にも向けた話でシンプルではあるけど、だからこそ誰にでも刺さる
サーラとナランバヤルなど優しく芯の強い応援したくなるキャラクターも多く、中だるみもなく口当たりも後味も良い
とにかく優しくほっこりとした気持ちになれる
エンドロール観ながら、こういうのでいいんだよと深く頷いてしまった良作なのでオススメ
エイデン

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