ノラネコの呑んで観るシネマ

VESPER/ヴェスパーのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

VESPER/ヴェスパー(2022年製作の映画)
4.1
生態系が崩壊し、地表が意思を持った捕食する植物の森に覆われた近未来。
森に住む人々は、富裕層の都市シタデルの供給する、自己複製能力の無い一代種子に頼って細々と生きている。
寝たきりの父と暮らす聡明な少女ヴェスパーは、ある時墜落した飛行機の生き残り女性と出会う。
終始曇り空の陰鬱なムードで展開する、ディストピアSF。
主人公が独学で植物の研究をして、世界の謎を解き明かそうとしていたり、空から来た女性がドラマが動く起点になったり、「風の谷のナウシカ」オマージュの設定が多々見られる。
ただし映画そのものは、思いっきり低予算かつ地味な展開なので、王蟲の群れが暴走したりするスペクタクルな見せ場は無い。
不思議な植物が沢山出て来る未来の森は、まずまずの作り込み。
閉塞し切った世界で、若者が希望を伝えると言うテーマ性も分かりやすい。
神話的な世界観はかなり好みだけど、人造人間の扱いはやや中途半端に感じた。
予算の問題もあるのだろうが、母とピルグリムのエピソードとかも、更に一工夫出来たように思うが、丁寧に作られたなかなかの良作だ。