たく

スマイルのたくのレビュー・感想・評価

スマイル(2022年製作の映画)
3.7
シンプルながら面白かった。精神科医が、自殺の連鎖を起こす「何か」に取り憑かれる話で、主人公の心情を直接表すような不安をかきたてるBGMが効果的。ジャンプスケアをふんだんに採り入れながら、B級映画っぽくなってないのが良かった。タイトルが示す「笑顔」の不気味さはピエロに通ずるものがある。正体不明の存在が伝染していくプロットが「イット・フォローズ」に似てて、同作は死が具象化したものとして描かれてたのに対し、本作は罪悪感が具象化されてたね。あと、ポスターの人物が主人公ではなく、主要人物ですらないのは驚いた。

精神科医のローズがある日診断した患者の女性が、自分の周囲で何者かがいろいろな人物に姿を変えて迫ってくると訴えた直後、不気味な笑みを浮かべながら自殺してしまう。この日を境にローズの周囲に患者の女性が訴えてたことと同じ現象が起こり始めて、ローズがこの状況にどう立ち向かっていくかという展開。それまでラブラブだった婚約者の男性が、ローズの奇妙な訴えに聞く耳を持たず距離を置こうとするところに典型的な「男の薄情」が出てたね。これに対してローズの元カレで刑事のジョエルがローズの話を親身になって聞いてあげるのが対比的に描かれてた。

ジョエルの捜査によって、自殺を目撃した人がまた自殺するという連鎖が起こってることが分かり、ローズに迫る「何か」はどうやら過去のトラウマや罪悪感を餌にしてるらしいという、人間心理に迫る話になってくる。一人だけ連鎖を逃れた男性がいるところにちょっとした捻りが効いてて、ローズがそれを実践しようとするのが怖い。終盤で彼女が事態にケリを付けるため、母親に対する罪悪感に向き合うところが胸熱なんだけど、まあ胸糞悪い終わり方だったね。エンドクレジットに“Lollipop”が流れるのがミスマッチ感あって、これはアメリカで売ってる笑顔をかたどったロリポップキャンディと関係あるのかな?
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