【原点回帰の人間ドラマ!】
思えば『ロッキー』は、転がり込んだチャンスに人生を賭けた《無名の男》の物語だった。
ポーリーやミッキーといった、ロッキーを取り巻く人物も、くすぶった者ばかり。
そんな負け犬たちの想いが生み出すドラマが、私たちの心に突き刺さったのだ。
しかし、シリーズを重ねるごとに、趣きが変わっていく。
大スターになったスタローンは、大ヒットさせるべく、ロッキーをアメリカの英雄に仕立てあげた。
その頂点が『ロッキー4』。
だが、老人となったスタローンが再編集した本作は、アメリカvsソ連の代理戦争ではなく、個人の想いに焦点を合わせた原点回帰の一作に仕上がっている。
中でも、ドラゴの印象が全く変わることに驚きを禁じ得ない。
ストーリーはそのままで、出演シーンも大幅に増えた訳ではない。
それでも、アメリカから見た恐ろしいソ連の象徴ではなくなり、人間ドラゴの葛藤が鮮烈に浮かび上がる。
そう、ドラゴもまたチャンスが回ってきた《無名の男》なのだ。
生まれ変わった本作を通して、ドラゴの心情をしっかりと感じてほしい。
ドラ泣きとは、本作のためにある言葉だ!