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そばかすのSWDのレビュー・感想・評価

そばかす(2022年製作の映画)
4.0
自分は(おそらく)当事者では無いが、間違いなく今もなお苦しみを抱えながら生きている誰かを救うパワーを持った快作だと思った。

ああ、今話題のアロマンティック・アセクシュアルね、と知ったかぶる観客を、とあるキャラクター(主に二人)の台詞が強烈に刺してくる。他人をカテゴライズし決めつける事のナンセンスさをこれでもかと見せつける。
異性愛の原理に迎合も抵抗もせず、逃げるという選択肢を与えてくれる、道標のような映画。

・「レズビアン」「多様性」というワードが出てくる二つのシーンが印象的。理解者のつもりで間違った正義を振りかざしてくる人間が一番タチが悪い。そういう人間をこれ以上増やさない為の描写。

・そもそもアロマンティックやアセクシュアルといった単語すら劇中には出てこない。ゲイ、レズは出てくる。
「現状、一般的には認識すらされていない」「グラデーションがあって単純にカテゴライズできない」の2点に配慮した正しい扱い方。

・長回しによる緊張感の持続と暗喩を含んだ構図の連続が手堅くも素晴らしい。
柱を通じて心理的な障壁や飛躍を描く。

・屈指のギャグシーンである焼肉の場面は『哀愁しんでれら』を想起した。

・三浦透子があまりにもハマり役すぎて、エンドロールで主題歌を歌っているのが三浦透子自身であるということに気付いた時、謎の涙が溢れてきた。
そういえばこの人、天才的な俳優である以前に天才的なミュージシャンでもあったんだ…という。
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