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MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらないのfonske0114のレビュー・感想・評価

4.0
劇場公開時から「面白い」と口コミで広がり、内容と共に気になっていた作品。話はタイトル通り、「タイムループする社内から抜け出すためには上司に気づかせないと終わらない」というコメディドラマ。

演劇を見ているようなワンシチュエーションものだが起承転結があるため雰囲気も大きく変わるところがあり、あっという間だった。
マキタスポーツがとても味のある良い演技をしている。他には(失礼ながら)所謂知名度の高い俳優は出演していない為かなりフラットに鑑賞でき、笑いあり感動ありでとてもいい作品だった。


以下ネタバレ感想を。

当初は「繰り返される週」ということでコメディ要素が強かった。そこから上司を説得していくまでの流れは簡潔で、「起承」と流れを掴み、特に部長説得のプレゼンには笑った(他にも数珠破壊後の謎のスローモーションはアベンジャーズやヒーローもののようで、他人から見たらちょっとした出来事を大袈裟に演出する、こういうの私は好き。笑)


しかしこの作品はそこからがとても良かった。まず漫画原稿を見つけた事務?の方が信頼してもらえなかった場面では、「笑い」で上がっていた空気が「不信」となりその落差が大きい。
加えて、「漫画原稿投稿」という夢と「一丸で向かう」という友情、という一気にハートフルな展開へ。


私は手描きのつけペンで漫画原稿を描いていたことがあるため、あのアナログ作業は漫画家のそれを思い出した。当初はベタ(黒く塗るところ)や枠線、主線(人物の輪郭などのメインとなる線)も太く歪つだったが、回数を重ねるごとに線が洗練されていくのが再現されていて胸が熱くなった。

漫画の内容自体も察するに、「やり直し系」のもので、その絵柄と共に藤子・F・不二雄による『未来の想い出』を想起させた(同作は漫画家としてヒット作を生み出すがその後鳴かず飛ばずで、デビュー前からの人生をやり直すタイムリープもの)。
漫画のあらすじは「地味な人生でも良かった」という胸が熱くなる内容で(特に二人が結ばれてから、二人で食堂を切り盛りするコマはとても良かった)、社内の人間関係とともに「目の前の現実に目を向けることとそのありがたさ」を描いていた。


主人公の女性のように、何かに焦ったりこのままではいけない、と感じることは私もそうだが、誰にでもあるように思う。しかし一歩一歩、そして自分の見える範囲に目を向けていくことが大切であると改めて感じられる終わりだったと思う。

思ったよりもラストはヒューマンドラマで驚いた。結局「なぜ今タイムループするのか」の理由(怨念?)とタイミングが明かされずなど細かいところまで考えると物足りなさもあるかと思うが、個人的には「細かいことはいーや」という雰囲気で今作は見られた。


しかしながら見ていて思ったのは、「繰り返し見ること」はなぜ面白いのだろう、ということ。マキタスポーツの、「みんな若いねぇ」はもうお決まりすぎて面白い。

笑いの用語でも同じことを繰り返して笑いをとることを「てんどん」と言い、同じことが起こると見せかけて違うことをして笑いをとることを「すかし」と言う。
「繰り返しによる笑いの不思議」についても考察が深まる作品だった。


尚余談になるが、日本アカデミー賞は公開劇場数などエントリー条件が厳しく、エントリーされるだけでも話題作に絞られる傾向にある。今作のような作品が脚光を浴びにくいのはなんとも残念だと、今回のような映画を見る度に思う。
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