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落下の解剖学のfonske0114のレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.0
フランス、アルプスに住む夫婦に起きた事故。その真相をめぐり様々な思いが交錯するサスペンスドラマ。
アカデミー賞脚本賞受賞作でかつサスペンスものということで楽しみにしていたが、自身のハードルが上がったこともあって、私には合わず物足りなかった。


以下ネタバレ感想を。

この作品は「不可解な死」「冤罪か有罪か」などよくあるパターンながらも脚本が注目されていたことで楽しみにしていた。

しかしながら登場人物が少ない場合は犯人が絞られる上、証拠が次々出てくるので「この展開はちょっとずるい」と思ってしまった。

事件前日の音声なども約一年後の公判中のことで、「そんなに時間が空く?」とも思った。結局真相はどちらにもとれる終わり方で、これも「ずるい」と思った。

人物たちの描き方は地味だが人間味があり良く、また冒頭より建物ばかりで中々明るみに出ないカットの連続で不穏な空気があるなどその世界観はとても良かった。

調べたところ、評価されている理由の一つは「心象証拠で人を判断する」ことへの警笛(昨今のSNSなど)と言われるが、それは昨年の是枝監督の『怪物』でも描いていたので世界的な議論の的の一つなのかもしれない。

しかしながら、「人の印象と裁判」を扱った過去のサスペンスものでは洋画『真実の行方』韓国映画『母なる証明』、古いところでは洋画『情婦』などでも扱っており、見応えも今作よりあるように思う。


つまり、私にとって今作は新鮮味に欠けているように感じた。裁判ものにも関わらず正直なところ「言い分合戦」に見えて眠くなった(この「言い分合戦」をどう捉えるかが作品の本質の一つだったかもしれないが)。

ただフランス語と英語が飛び交うのは新鮮で、両言語を学んだ私にとってはその言葉のスイッチの瞬間は非常に面白く、久しぶりに「フランス語を学んで良かった」と思った。

犬のスヌープ(「まさかスヌープ・ドッグからか!?」と一人でツッコミを入れていた)は良い演技をしており驚いた。
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