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Pearl パールのSSDDのレビュー・感想・評価

Pearl パール(2022年製作の映画)
4.2
◼︎概要
要介護の父親、厳格で厳しい母、戦争に駆り出され戻ってこない夫、スペイン風邪の流行と戦争…。1918年テキサスの孤立した農園で映画のダンサーに憧れた女性は、様々な家庭事情などから鬱屈とした感情を抱えていた…彼女は大切な何かが欠落している。

◼︎感想(ネタバレなし)
最高年齢の殺人鬼を描くX エックスの前日譚となり、いかにしてシリアルキラーが誕生したかを描く。

ゆっくりと壊れた精神崩壊が始まっている様を見せつけ、抑圧され続け、夢をみることすら否定され、壊れた精神世界に一人孤立していくという禍々しさが素晴らしい。

ミア・ゴスを賞賛する方が多いためあまりなんで人気か以前は理解できなかったが、素晴らしい独演のシーンがあり、入り組んだ気持ちを現実を認めながら、狂気の世界観を展開するシーンは圧倒された。

前作に直接的ではなく繋がるものや、連想されるものが多く、これは再度前作を観直してみたいと思える。
三部作のため、どのように本作からまた昇華できるのか楽しみな作品です。










◼︎感想(ネタバレあり)
・壊れゆく世界
殺害対象の母親や映画技師は、殺人に罰や思いを伝えるという意味があったが、父は殺したことを後悔していると訴え、母の言葉を噛み締め生き方を見直すというのが皮肉。

義姉妹に対して"望むのは辞めた、今は持っているものを大切にする"といって殺害するシーンは見事だった。

全て自分で起こしたことにしっかりと後悔して、壊れた世界を自分なりに再構築し、"悪魔のいけにえ"のような食卓シーンは最高だった。腐りゆく豚が乗り、両親の死体との晩餐に戻ってくる夫という終わり方。なんともいえないカタルシスがあった。

・ゼタ
前作のワニはたまたま近くにいるワニではなく、しっかり人間の肉で餌付けされたワニだったのか。
卵があったから前作は二世か三世なのかもしれないが、妙に愛着が湧いてしまった。

・総評
現実から目を背け、妄想に逃げ込んだ主人公の最高の踊り。殺人という取り返しのつかないことまでしてしまったにも関わらず、それすら運命は受け付けなかった。

そのことで母の言う運命を受け入れて、農場で殺戮しながら安定した日々を手に入れようと考える壊れた世界観は面白かった。

主人公が自身の大切な何かが欠落していることに気付きながら、他者がそれを恐れることに対して不快に思うというジレンマの描き方が色濃く、映像美も含めて素晴らしかったです。

A24にしてはあっさりめの作品で、無駄な主張が多くなかったのも良かった。
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