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美と殺戮のすべてのYMのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
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属するコミュニティへの仁義というか、その熱、愛と怒り、根本が喪失からきていること、決して「豪腕!」みたいな気質では無い彼女のその負担、同時にある強さを思うと胸が締め付けられる思いだった。
サックラー家はサックラー家なりに死体の上に資産を築いた義務を果たしているつもりでいたのでしょうが、それは社会的責任を果たしているとは言い難い。
貴族のためにある芸術は今でも確かに存在するけれど、いくらでも求める手はあるのにそちらには転ばぬ芸術家が、身体を売ることや暴力の被害を受けながらも全てを写すことで築いたキャリアの喪失を恐れながら、それでも声をあげるのが、彼女のノブレスオブリージュなのだろう。かっこいいよ。METで声もからだも震わせながら、写真を撮っていた姿。かっこよかった。

スライドショーが入るのよかったな。
自分は彼女の写真がとても好きなので、彼女の運動だけではなく、彼女の人生の一部、一部だが、濃密な記録を見せてもらったことへの感謝が尽きない。
写真は他者に明るみにすることで商業的価値が出るかもしれないけれど、彼女の撮る私写真は、まず何よりも記録として圧倒的な意義を持つのだと、はっとさせられた。人生はつくられた物語ではない。短絡的な結末などない。見えないこともある。それはこれからも続いている。
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