オピオイド危機について恥ずかしながらよく知らなかったのだけど、自分自身が長い間メンタルクリニックで処方薬を貰って飲んでいる身だということもあってか、映画序盤での簡単な問題への説明でその極悪非道ぶりが一瞬で伝わり2時間食い入るように観ることができた。悪魔の所業以外の何物でもないというか、身体からシラミを除去しますよと礼儀正しく接してガス室へ連れて行くのと本質的に変わらない気もする。
オピオイド危機に対して抗議するゴールディンの現在とゴールディンその人の人生に対するインタビューを繋げる映画なので、邦題に彼女の名前を入れたくなりそうなものだけど入れなかったのが偉い。
しかし映画の合間とはいえスクリーンでスライドショーをしっかりと見せるというのが観客的にも結構ちゃんと豊かな経験になるというのは発見だった。
メンタルと薬、カメラと写真、そして映画を繋ぐのはテクノロジーという言葉だという気もしている。誇張でもなんでもなく薬というのもテクノロジーの産物だし、常に人間の身体と精神は様々なテクノロジーの持つ薬と毒の両面に晒されているようにもおもえる。